学習する組織

Learning Organization

「チーム学習」は、グループで一緒に探求、考察、内省を行うことで自分たちの意識と能力を共同で高めるディシプリン(学習領域)です。

チームとは、目的を達成するために互いを必要とする集団のことです。学習は、個人単位で起こるものではありますが、よりチーム学習に卓越した集団においては、社会的に学ぶことによって個々人の学習以上に、深く広く効果的に学ぶことができます。

しかし、多くのチームや集団は、チーム学習のレベルが低いために、効果的に学ぶことができず、多くの時間を使ってしまうことに話し合うことをあきらめてしまうことも少なくありません。このとき、そうしたチームやその構成員がやってしまいがちなことが、話し合われるコンテント(内容)ばかりに焦点をあてて、メンバー間やチーム全体で起こるグループプロセスを軽視するために、メンバーの主体性も、活発な議論も、さらにはより深いレベルでの洞察や問いも生じないために、メンバーの知性や感性が活かされずに終わってしまうことです。

チーム学習に卓越したチームや集団は、グループプロセスをないがしろにせず、とりわけメンバーの間で共有されていないコンテクト(文脈)の理解を図ります。ここで用いられるのがファシリテーションであり、ファシリテーターは、コンテントと合わせてコンテクストの理解を通じてグループプロセスの改善を図り、メンバー間の関係性(信頼関係、心理的安全性など)を高め、思考の質を高めて、より効果的に行動ができるように働きかけます。

こうしたチーム学習は、量子力学者のデヴィッド・ボームは「(ボーム式)ダイアローグ(対話)」の影響を通じて実践を深め、ビル・アイザックらによって対話実践のための重要な原則を、「互いの存在を尊重する」「互いに深く耳を傾ける」「心にあることを声にする」「メンタル・モデルを保留する」の4つにまとめました。

世界的に著名なファシリテーターのアダム・カヘンは、メンバー間の話し方と聞き方を4つのモードに分類します。
  「ダウンローディング(命令、儀礼的な会話など)」
  「ディベート(討論・議論)」
  「ダイアログ(内省的な対話)」
  「プレゼンシング(生成的な対話)」

チームとして自分たちの話し方と聞き方を、望ましいモードへと調整することで、チームのグループプロセスを改善し、また、よりクリエイティブなコンテントの創造、共創を図ります。

このようなチーム間のプロセスをオットー・シャーマーは「Uプロセス(U理論)」と呼び、また、リーダーシップ論のエイミー・エドモンドソンは「チーミング」と呼びました。

さらには、「ワールド・カフェ」「アプリシエイティブ・インクワイアリー」「フューチャー・サーチ」「OST」「ハッカソン」「アフター・アクション・レビュー」などのさまざまな実践手法が開発、実践されています。 

ポイント

場の質、関係性の質を高める

関係性の質、思考の質、行動の質、結果の質は相互に作用し合って、しばしば悪循環や好循環を生み出します。チーム学習は、場の質を高めることで関係性の質を改善し、思考、行動、結果の質の向上をもたらします。

保留する、視座を転換する、手放す

チーム学習の能力向上には、「メンタル・モデルを保留して、他者の話をありのままに聴き、自己の主張を内省的に話すこと」、「相手の立場から共感的に聴き、あるいは全体の視点から俯瞰すること」、そして「未来に制約を課すこだわりを手放すこと」が必要となります。これらが相まって、共創的な対話や新しいビジョン、アイデアの創造が可能となります。

練習場と場の設計

チーム学習には練習が欠かせません。チェックイン/チェックアウト、振り返りセッション、アクション・ラーニングなどの実践を重ねます。また、よい対話を行うには、物理的な場のデザイン、グラウンド・ルールなどを適切に設計することが必要です。

チーム学習の真髄は、メンバーたちが今ここにありのままにいてエネルギーを集め、メンバー間の意図や理解が合致した状態を生み出すことです。

(小田理一郎 著『「学習する組織」入門』より)

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デニス・サンドウ氏

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全体を見るというのは、攻撃的な争いや従順な平和を超える方法だ。

――アダム・カヘン(書籍「未来を変えるためにほんとうに必要なこと」(英治出版)より)

私たちが直面している深刻な問題に閲して唯一可能な前進は、私たちのマインド、心、そして意志をオープンにすることによってもたらされる。

――ピーター・センゲ

愛なき力は暴力的で支配的であり、力なき愛は感傷的で実行力に乏しい。

ーーマーティン・ルーサー・キング・ジュニア

(アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者、ノーベル平和賞受賞者)

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