学習する組織
共有ビジョン
「共有ビジョン」のディシプリンは、組織全体で共有する使命、ビジョン、価値観に関わります。それは、組織全体で互いに個人ビジョンを聞き合い、共有ビジョンを紡ぎ、今の現実と対比して未来に対して創造的な姿勢で取り組むことです。
組織に所属するあらゆる人の学習の焦点を絞り、創造する能力を伸ばそうとする学習のエネルギーを生み出す、『学習する組織』において不可欠なものです。
「自分たちは何を創り出したいのか?」という問いに対する答えであり、組織のあらゆる人が共通して思い描く、創り出したい未来のイメージです。「共有ビジョン」は、社員と会社の関係を変化させ、会社をだれかの会社ではなく「自分たちの会社」に変え、心から成し遂げたいと思う目標へ引っ張る力となります。創造する能力を伸ばし、ストレスが生じたときにも針路を保つかじ取り役となり、リスクを厭わない行動や実験を促します。そうしたい、と人々が心から願うことが長期にしか成しえないビジョンを抱くことにつながり、長期的なコミットメントと行動への移行が促されます。
本当の意味で共有されるビジョンが生まれるには継続的な対話が必要です。互いのビジョンに耳を傾け聴くことは、往々にして話すことよりも難しいことです。多様なビジョンの共存を許したうえで、あらゆる個人ビジョンを超越し、統合するにはどの道を進むべきかを聴きとろうと耳を澄まさなければなりません。
船をつくりたかったら、人々に作業を割り振るのではなく、はてしなく続く広大な海を慕うことを教えよ。
――アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ(飛行家、作家:代表作「星の王子さま」)
将来を予測することはできないが、それを想像して愛情を込めて実現することはできる。ビジョンが幅広く共有され、見えていれば、『新しいシステムをもたらす』ことができる。
ーードネラ・メドウズ
ポイント
ビジョンが何をなすか
共有ビジョンは、どんな文言かではなくそれが何をなすかが重要です。よい共有ビジョンは熱意や勇気ある行動を促します。ビジョンへの行動意欲には「コミットメント」から「無関心」まで7つの段階があり、高次の意欲を引き出すことを目指します。
ホログラムの原則
リーダーとメンバーたちがビジョンを聞き合い、それぞれ選択の自由を持ちながら、共有ビジョンを紡ぎます。共有ビジョンは、役割ごとに明確な具体像が描かれるとともに全体像がすべての人に共有される、ホログラムのようになります。
ビジョン展開マトリックス
自己マスタリーと同様に、共有ビジョンについても、創造的緊張を生み出すことが重要です。ビジョン展開マトリックスを使って「今の現実」をありのままに見るとともに、望ましい未来のビジョン、メンタル・モデル、構造を明らかにして、選択を促します。
共有ビジョンの真髄は、メンバーの間で互いの目的やビジョンの共通性を見出し、その理念と互いに対してコミットするパートナーシップを築くことです。
(小田理一郎 著『「学習する組織」入門』より)
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- ピーター・センゲ著『学習する組織』
- 小田理一郎著『「学習する組織」入門』
- 小田理一郎著『マンガでやさしくわかる学習する組織』
- アダム・カヘン著『社会変革のシナリオ・プランニング』
- ディヴィッド・ストロー著『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』
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