学習する組織
自己マスタリー
「自己マスタリー」は、自分が心から求めている結果を生み出すために、自身の能力と意識を絶えず伸ばし続けるディシプリン(学習領域)です。
継続的に自分に何が大切か明確にすることと、継続的に今の現実をより明確に見る方法を学び続けることによって、「創造的緊張」を生み出し保持します。
ビジョンと今の現実の乖離は、創造的緊張だけでなく「感情的緊張」も生み出します。そこで生じる「構造的対立」に陥らないように、あるいはその構造を抜け出すように自己マスタリーの基本となる実践を続けます。
ピーターセンゲの提唱する「学習する組織」をつくるには、メンバー個々人が志を持って自己を磨き、創造的な姿勢でものごとに取り組むことが不可欠となります。自己マスタリーは、「学習する組織」の5つのディシプリンの中でも最も基盤となる領域と言えるでしょう。
あなたの人生の天命を見つけることは、あなたの心の深い喜びと世界の深い飢餓との交差点を発見することです。
――フレデリック・ブフナー(作家、牧師、神学者)
システムへの介入の成功は、介入者の心のあり様に依存する。
――ウィリアム・オブライエン(ハノーバー保険会社 前CEO)
盲点になっているのは、何を(what)でも、どう(How)でもなく、誰(Who)という側面だ。リーダーが何を実行するか、どのように実行するかではなく、個人としても集団としても、自分は何者なのか、行動を生み出す心の源は何かだ
――オットー・シャーマー(書籍「出現する未来」(講談社)より)
ポイント
目的とビジョン
志は、目的とビジョンの両輪によって機能します。自らの強みを理解して、「何を創り出したいのか」「どうありたいのか」という個人ビジョンを我が事として克明に描き、目的意識によって強化します。
創造的緊張と感情的緊張
明確になったビジョンと今の現実を対比したときに働く創造的緊張は、能力開発や主体的な行動を促し、ビジョン実現のために今の現実を前進させる原動力となります。一方、今の現実の負の側面が強く出て感情的緊張が働くと、ビジョン実現に抵抗する力が強くなり、構造的な対立を招きます。感情的緊張の背後にある受け身の姿勢に気づき、感情の源を見つめることで構造的な対立の解消を図ります。
真実を見つめる
構造的対立を避け、創造的緊張を強化するには、真実をありのままに見ることが必要です。弱みだけでなく強みも、困難だけでなくチャンスも中立的に見つめて、自身の選択の幅に気づき、意識的な選択を行います。
自己マスタリーの真髄は、ビジョンと現実の両方を見据えて探求・内省を行い、自ら意識的に選択を行うこと、そして根源とつながって自身のあり方を磨き続けることにあります。
(小田理一郎 著『「学習する組織」入門』より)
関連書籍
- ピーター・センゲ著『学習する組織』
- 小田理一郎著『「学習する組織」入門』
- 小田理一郎著『マンガでやさしくわかる学習する組織』
- ビル・トルバート著『行動探求』
- ディヴィッド・ストロー著『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』