サステナビリティ
社会変革のためのシステム思考
近年、気候危機に伴う様々な災害、社会情勢の変化の影響は激しさを増し、工場の閉鎖や市場の縮小に見舞われるなど、一部の地域社会だけでなく企業や投資家もこれらの影響を受けることが決して少なくありません。
このような背景にあって望ましい未来を実現するために、実に多くのステークホルダーや似たテーマの社会課題に取り組むプレイヤーが関わります。一つの組織が単独で成果を出すケースもありますが、多くの場合は、数多くの組織の活動の集合体として成果が現れます。こうした成果は、自組織がモノやサービスを産出(アウトプット)しても他の組織の成果達成の前提条件を満たさないこともあるし、むしろ他組織の活動が意図せずに自組織の成果を阻害する場合もあるでしょう。また、似たテーマに取り組むプレイヤーたちが、限られた資金や人材を奪い合うことも考えられます。
詳細の複雑性
社会変革(ソーシャル・イノベーション)の取り組みは高度な複雑性が特徴です。まず、社会課題のあるテーマを取り上げても、その国や地域、セグメントによって、さまざまなパターンや文脈があることによる複雑さです。
ダイナミックな複雑性
そして、短期的にプラスの成果を出す施策は長期的にはマイナスの成果をもたらし、逆に長期的にプラスの成果を出す施策は短期的にはマイナスの成果をもたらすことがしばしばあります。
社会的な複雑性
また、同じテーマの社会問題に関わる人たちの間でも、現状はどのようになっているのか、何が問題なのか、何がその原因か、何が目指す姿か、何が解決策か、どのような資源配分や順序立てがなされるべきかなど、さまざまな点で、違った認識や意見を持っていることは当たり前のようにあります。
適応を要する課題
さらに、ある人の視点から「正しい解決策」があったとしても、それを誰が、どのように伝えるかによって効果が異なり、しばしば介入者自身の態度や行動が「システムの抵抗」と呼ばれる逆効果を生み出すこともあります。
システム思考は、これらの複雑性を扱うアプローチであり、プロセスであり、共通言語です。システム思考とは、自らの理解とほかの人の理解を重ね合わせて、さまざまなつながりでつくられるシステムの全体像とその作用を意識し、理解する能力です。システム思考による現状分析とレバレッジの探索、利害関係者を巻き込んだ学習プロセス、そして創り出したい未来像からバックキャスティングするアプローチを織り込むことで、より効果的に望ましい変化を自ら創り出していくことができると考えています。
チェンジ・エージェント社では、これらのアプローチによるプロセスを日本の組織と共に協働で進めながら、NPO/NGOや企業で社会課題解決にあたる変革リーダーと組織の能力開発に取り組んでいます。
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- ディビッド・ストロー著『社会変革のためのシステム思考実践ガイド――共に解決策を見出し、コレクティブ・インパクトを創造する』
- デアダム・カヘン著『共に変容するファシリテーション』
- デアダム・カヘン著『敵とのコラボレーション』
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ーーパウロ・フレイレ(教育者、哲学者)