システム思考
時系列変化パターングラフ
時系列変化パターングラフとは、縦軸にはシステムの重要な要素(アウトカム、アウトプット、アクティビティ、インプット;重要なリソースや資本;アクティビティのプラスマイナスのインパクトなど)を、横軸には時間をとり、過去から現在、未来までどのような変化のパターンがあるかをグラフにして描き出すツールです。英語ではBehavior Over Time (略称BOT)グラフといいます。
氷山モデルになぞらえると、「出来事」レベルの下の「パターン」のレベルにあることを明確にするもので、システムの変数の傾向やトレンドに注目をします。
システムの特徴を表すような主要な変数の変化を、システムの挙動(Behavior)と呼びます。システム思考のもっとも重要な原則の人が、「システムの挙動・パターンは、その構造によってつくりだされる」ということです。ループ図などのシステムの構造の分析を始める前に、システムがどのような挙動を生み出しているのかを明確にする必要があります。
システムにおける主要な変数がとりうる挙動はさまざまではありますが、とりわけフィードバック構造によって生み出される挙動の基本パターンは以下のようになります。
ダイナミックなシステムにみられる挙動の基本パターン
(スターマン著『システム思考』より)
時系列変化パターングラフでは、このようなシステムの挙動を、過去から現在までの「今までのパターン」と、現在から未来に向かって「望ましいパターン」「このままのパターン」など複数のパターンを描きます。
例えば、下記のグラフは地球表面上の平均気温に関わる重要な変数について、2000~2100年までを時系列変化パターングラフを示しています。
1)2000~2021年までは黒線・青線とも「今までのパターン」
2)2022年以降の黒線は「このままのパターン」(なりゆきシナリオ;2100年の気温上昇3.6度)
3)2022年以降の青線は「望ましいパターン」(目標シナリオ;2100年の気温上昇1.5度)
Climate Interactiveの En-ROADS によるシミュレーション結果の一例。
時系列変化パターングラフでは、横軸の時間軸の選び方はさまざまです。システム思考では、一般に通常の分析よりも長めにとる傾向がありますが、暦年でとってもよいですし、人や製品、組織での時間展開に合わせてライフサイクルで見てもかまいません。子どもについて、誕生から学校入学前、小学校、中学校、高校、大学や専門学校などの高等教育機関、そして就学まで、製品や組織なら、構想・起業から開発期、成長期、安定期、成熟期、衰退期をとるなどです。
また、時間の経過を見るのに年単位ではなく、月、週、日、時間、分などの単位になることもあります。例えば経理部の業務のばらつきを考えるとき、年間でどの月か、月間でどの週か、週間でどの日か、検討する課題によって適切な時間軸を選ぶか、あるいは複数の時間軸を統合するかを考えます。
システム思考のプロセスでもっとも重要なことは、時系列変化パターングラフをもって「今までのパターン」及び「このままのパターン」を明確にして「参照モード」とし、システムがなぜそのように挙動するのかについて関係する変数のつながりの構造を明らかにしながらループ図を描いていくことです。
また、未来の挙動を考える上で、システムの主要な変数がどのような水準にあるのかがとても重要です。システム思考の実践では、時系列変化パターングラフとループ図の間をたびたび行き来して吟味します。
時系列変化パターングラフに関連する参考図書
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時系列変化パターングラフに関連するセミナー・研修
チェンジ・エージェント社のシステム思考に関するセミナー・研修では、基礎編の「システム思考の基本ツール」及び「実践編の「時系列変化パターングラフを描く」のセッションで時系列変化パターングラフの描き方を紹介します。また、「時系列変化パターングラフ」について特に詳しく扱うのは、下記のセミナーです。