サステナビリティ
食糧問題
世界では、20世紀から今世紀にかけての加速する人口増加とライフスタイルの変化から食糧の需要が増 しており、それに対して生産量が追いつかなくなりはじめています。一人当たりの生産量はすでに減少しており、さらに流通や分配上の問題もあって、世界で8 億5千万人の人が栄養不良の状態にあって、毎年600万人以上の子供が命を落としています。(しかも、その半数は第一次産業に従事する人たちとなっています。)
カロリー量の大半を占める穀物の生産量に関して、もっとも重要な資源は農地です。世界の陸地の4分の1が農地なのですが、実は穀物の作付面積はここ のところ15億haほどで増えていません。砂漠化の影響によって、過去40年間に13億haを失い、現有面積の39%で土壌劣化が進んでいます。作付面積 が伸びない中、面積あたりの収量を伸ばすことで生産量を増やしてきましたが、そこでとられる化学肥料、農薬、灌漑などが適切に行われないために、かえって 土壌劣化を加速しています。さらに、水問題や温暖化問題、生態系の劣化の問題が拍車をかけています。
日本人の好きな魚については、世界の漁獲高の4分の3が持続可能なレベルぎりぎりか、あるいはそれを超えているといわれ、天然魚の漁獲量はすでに 減っており、また大型魚に関していえば1950年からの50年間で資源量が90%も減ってしまいました。マグロの漁獲高制限など、その影響が日本の食卓に も及び始めています。このままのペースで需要が伸び、世界規模での乱獲が継続されると、2050年には食卓から天然の魚が消えるだろうとまで言われています。
国内の農業の状況からは想像しがたい事態でありますが、世界的な食糧問題は、その60%(カロリーベース)を輸入している日本にとって深刻な問題となっていくことでしょう。
システム思考のアプローチが、食糧問題の理解に役立ちます。
- 水産資源などの再生可能資源においても、漁獲量(アウトフロー)が再生量(インフロー)を超えるとストックは減少していく
- 農業において、化学肥料、農薬、大規模な灌漑に頼る農業は短期的には生産性を上げるが、長期的には土壌の劣化を招き、生産性は著しく低下する
- 食糧の生産量を増やすための施策が、しばしば「生態系サービス」と呼ばれるほかの自然の恵みに悪影響を与えるトレードオフを作り出している
このような、基本的なシステムの関係が、食糧生産の将来に対して大きなリスクを明らかにしています。
チェンジ・エージェントの取り組み
チェンジ・エージェントでは、食糧問題についてその長期的なパターンと構造を理解し、適切な対策を図っていくための講演や研修を実施しています。シ ステム思考は、日本の食品加工工場や食卓から遠く離れた生産地において何が起こっているのか、そのつながりを考える上で効果を発揮します。
弊社が日本語版ライセンスを取得している「未来水産株式会社」は、漁業をはじめとする持続可能な第一次産業のあり方を考える上で、重要な構造とメンタルモデルを明らかにしてくれるシミュレーション・ゲームです。すでに国内の多くの企業でこのシミュレーション・ゲームが実施されています。
また、学習する組織の方法論、とりわけ「U理論」といわれる社会革新の方法論を使っているのがサステナブル・フード・ラボ・プロジェクトです。弊社では、このプロジェクトを学習する組織の先端事例として紹介し、日本でも同様の取り組みを考える企業の支援を行いたいと考えています。
サステナブル・フード・ラボに関しては、こちらをご覧ください。