学習する組織

Learning Organization

学習する組織5つのディシプリン

学習する組織とは、目的に向けて効果的に行動するために集団としての「意識(アウェアネス)」と「能力」を 継続的に高め、伸ばし続ける組織です。学習する組織において、人々は目的を達成するために必要な人たちとチームを形成し、大きな組織はチームのネットワークによって構成されます。

それぞれのチームにおいて、個人及びチームは、中核的な学習能力を構築する「5つのディシプリン」を学びます。ピーター・センゲは、2000年頃より3本脚の椅子をメタファーとしながら、この5つのディシプリンを紹介しています。

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ピーター・センゲ『学習する組織』より

椅子の座面が、チームの中核的な学習能力を表し、それを支える3本柱が
(1)志の育成、(2)複雑性の理解、(3)共創的な対話の展開です。

1つめの柱
「志を育む力」

「志を育む力」は、自らを動かす力です。個人、チーム、組織が、自分たちが本当に望むことを想い描き、その望むことに向かって自ら選んで変わっていく能力のことです。自らのありたい姿を憧憬し、その実現に向けて研鑽を続ける「自己マスタリー」を高め、組織で「共有ビジョン」を紡ぐことで、内発的な動機にあふれた個人がその「想い」を重ねた集団を創り出します。

2つめの柱
「複雑性を理解する力」

「複雑性を理解する力」とは、自らの理解とほかの人の理解を重ね合わせて、さまざまなつながりでつくられるシステムの全体像とその作用を意識し、理解する能力です。とりわけ、さまざまな利害関係者との絡みの中で、時間の経過と共に展開されるダイナミックな複雑性を理解する「システム思考」の修得が鍵を握ります。

3つめの柱
「共創的に会話する力」

「共創的に会話する力」とは、個人、チーム、組織に根強く存在する無意識の前提を振り返り、意識しながら共に創造的に考え、話し合う能力です。世界がどのようになっているかの意識・無意識の前提が「メンタル・モデル」です。また、メンタル・モデルを意識して、保留しながら話し合うことができることが、ダイアログなどの「チーム学習」には重要な要件となります。

学習する組織の能力の3本柱は、「3本脚の椅子」にたとえられます。つまり、どれか1本だけ長くても安定しません。ビジョンだけが強いと絵に描いた餅に陥りがちですし、考えてばかりで選択がなければ行動につながりません。どんなに気持ちのいい対話をしていても、ビジョンや現実の複雑性の理解がなければ話しておしまいです。3つの力をバランスよく伸ばし、実践することが必要なのです。

ディシプリンの概要は、それぞれのディシプリンの紹介ページをご覧ください。

1 自己マスタリー

自己マスタリーは、自分が心から求めている結果を生み出すために、自身の能力と意識を絶えず伸ばし続けるディシプリンです。学習する組織をつくるには、メンバー個々人が志を持って自己を磨き、創造的な姿勢でものごとに取り組むことが不可欠となります。

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2 共有ビジョン

共有ビジョンのディシプリンは、組織全体で共有する使命、ビジョン、価値観に関わります。それは、組織全体で互いに個人ビジョンを聞き合い、共有ビジョンを紡ぎ、今の現実と対比して未来に対して創造的な姿勢で取り組むことです。

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3 メンタル・モデル

メンタル・モデルとは、頭の中にある現実を模したモデルであり、思考の前提や枠組みとなるものです。効率的な思考や行動を可能にする反面、バイアスや思い込みを生み出します。ここでのディシプリンは、自らのメンタル・モデルに効果的に対処する能力と意識を磨くことです。

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4 チーム学習

チーム学習は、グループで一緒に探求、考察、内省を行うことで自分たちの意識と能力を共同で高めるディシプリンです。チームとして自分たちの話し方と聞き方を、儀礼的な会話から討論、内省的な対話、生成的な対話へと高める能力を築きます。

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5 システム思考

システム思考とは、ものごとのつながりや全体像を見て、その本質について考えるディシプリンです。システムとは相互作用する要素の集合体です。組織や事業や市場の部分だけ見てもその複雑な動きは理解できず、システムの全体を捉えることが必要です。

システム思考のアプローチ へ

個々人の能力の総和を超える
「学習する組織」

チームでの学習は、個人が個別に学習しては到底達成し得ないような高度なレベルでの学習を可能にします。また、学習する組織を実践するチームでは、チームの能力は、個々人の能力の総和を超えて、はるかに大きな相乗効果を生み出します。学習する組織の開発に取り組むリーダーや担当者は、こうした組織システムないしそこでのプロセスに対する見立てや戦略、そして自らが率先して行動することで、起こしたい変化の先見性を伝え、自身をさらけ出し、矛盾や対立する力の中でのダイナミックな変化を築く触媒となることが求められます。

「学習する組織」は、学習する組織は、数多くの企業、政府組織、非営利組織で実施され、組織・セクター横断のネットワーク組織でも展開されています。日本では日産自動車、リクルート、トレンドマイクロなどで実践されています。また、海外では、シェル、ナイキ、IFC、JPモルガンチェイス、フォード自動車などの企業のほか、「学習する学校」「学習するコミュニティ」「学習する国家」など、さまざまな組織・集団に応用されています。

数ある事例の中でも、特に特徴的なものを紹介します。

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