システム思考
ビジネス編
工場の設備装置のメンテナンス
ワールドクラスの工場を目指す「生産ゲーム」に関わるループ図を紹介します。(記事はこちらをご覧ください。)
装置産業においては、稼働率の高さ、信頼性の高さが競争力を分ける重要な要因です。稼働率を下げる原因となる故障のメカニズムを見てみましょう。
装置に不具合が発生し、その不具合が蓄積してくると、やがて故障が発生します。故障が起こったとき、その装置は稼働できません。生産を継続できるように、直ちに修理を行います。そして、修理によって蓄積していた不具合は取り除かれ、その装置は再び生産できるようになります。
故障が頻繁に起こっているときの、もう一つの対策は、装置が故障するまで待たず、予防的に点検を行い、装置の調整、整備、部品交換などを行う予防保全があります。予防保全は計画的に行われますが、その間生産はできない点では故障と同じです。
故障が頻繁に起こっているときは、概して工場の生産スケジュールは逼迫し、生産部門はできるだけ装置を稼働させようとし、予防保全には回したくありません。しかし、故障したときには、どうしようもないので、修理を保守サービス部門に依頼します。こうして、工場内での事後修理の傾向が強まります。
事後修理を行うことの一つの問題点は、故障によってさまざまな二次的損傷が広がるということです。無理な稼働を続けることによって、ほかの部品に負荷をかけるほか、装置が故障で急停止した際などには、その衝撃で新たな不具合をつくり出します。
加えて、修理は再び稼働できるように急いで仕事をすることが多く、また故障が頻繁に起こると人手が足りなくなって、仕事の平均的な質が下がり、修理の際に再び新しい欠陥を残すことすらあります。
修理の問題は稼働率と信頼性の低下から、さらに売上の低下やコストの増加などの問題につながり、保守サービス部門はほとんどの人員と経費予算を修理に使ってしまいます。そうして、事後対応の組織風土ができあがっていきます。
組織をより望ましいあり方にするには、故障が多いときにでもあえて計画的な予防保全をすすめることが重要なのはいうまでもありません。(計画による適応の組織風土)
さらに、高いレベルの工場を目指すならば、なぜ不具合が発生するかに着目します。不具合は、原材料の質、部品の質、装置デザインの質、オペレーターの仕事の質、サービス部門のエンジニアの仕事の質など、さまざまな仕事の質の低下によって欠陥が生じます。それらの欠陥が、装置の不具合となっていくのです。
したがって、ワールドクラスを目指す工場において、あらゆる部門が精度の高い仕事の質で徹底的に欠陥を除くためのプロセス改善が重要となります。(全社的品質管理の組織風土)
トラブルだらけの工場は、故障の火消し対応に追われる故に、予防保全もプロセス改善も手が回りません。しかし、そのことがまさに火消しに追われる原因を作り続けているのです。