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Eさんと部下のストーリー
中堅になったEさんは、初めて部下を持って張り切っています。しかし、部下を持つのは簡単ではありません。自分ならこうするのに、と思うことでも、なかなかうまく伝わりません。それでも、できるだけ我慢強く指導していました。
そんなある日、Eさんはお得意先への書類提出を前にして頭を抱えてしまいました。部下の用意した書類が、とても提出できるものではなかったのです。これでは間に合わないなと思ったEさんは、「よし、これは俺がやるから、君はこっちの仕事をやって」と言い、得意先へ提出する書類は夜を徹して自分で仕上げました。
それからも、たびたびやらせてみては、結局自分でやることが増えていきました。Eさんは、今でもお得意先への書類を自分で作る日々が続いています。どうやら部下の「上司依存症」を作りだしてしまったようです。もしかしたらEさんは問題を取り違えてしまっているかもしれません。
Eさんの目に見えている問題は、お得意様向けの書類の質が低いことにあります。それに対するEさんの問題解決は、自分で書類を仕上げることです。書類は無事に提出できますが、これで、一件落着でしょうか? もちろん違います。Eさんの部下は、いつまでも業務遂行能力を育むことができず、Eさんがマネージャーとして本来すべき仕事をする時間が取れません。
「問題のすり替わり」
本当の問題は、「部下の能力が成長していないこと」、あるいは、「Eさんの部下育成がうまくいっていないこと」と言ってもよいでしょう。根本的な解決策は、部下の能力を開発すること、そしてEさんはその環境を整え、支援することにあります。
Eさんの部下の立場で状況を見ると、「お得意様向け書類作成」という課題が思うようにできず、いつもEさんにダメだしをされます。そして、しまいには、「もういい、俺がやる」と言われてしまうのですから、よほどの負けん気の強い人でない限りは、やる気も萎えてくるでしょう。
そうしたことを繰り返しているうちに、「難しい課題やできないことがあれば、いつも誰かが代わりにやってくれる」というパターンが生まれます。こうしてやる気もなく、上司に依存していると、本来行うべき能力開発がなかなか進まないことになります。
こうして部下は、上司への依存の悪循環を重ね、上司は問題構造を見誤って、悪循環を助長しています。Eさんは上司としての本来の仕事を忘れてしまっているようです。これは「問題のすり替わり」というシステム原型です。
それぞれの思っていること、考えていることをオープンに話し合ってみると、ずいぶんとお互いの思い違いが多いことがわかります。率直に話し合うことで、本当の課題も互いに見えてくることでしょう。
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