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システム図をより身近なものにするには

2021年11月24日

(本記事は、『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』著者のディヴィッド・ストロー氏のブログ記事を翻訳してご紹介しています。)


システム思考は、難しそうですが実は思ったよりも身近なアプローチです。しかし、非常に複雑なシステム図を描くことがシステム思考であると、同一視されているため、尻込みすることがよくあります。さらに、有用なシステム図を作成するには長い時間がかかり、意味を理解したり行動したりするのは難しいという思い込みから、実践をためらってしまうこともあるでしょう。この記事の目的は、6つの質問に答えることで、システム図を資金提供者、組織のリーダー、コンサルタントにとってより身近なものにすることです。

  1. システム図の目的は何ですか?
  2. システム図の主たる意義は何ですか?
  3. システム図を作成するのに適した人は誰ですか?
  4. 良いシステム図はどの程度詳細にする必要がありますか?
  5. 役に立つシステム図を作るにはどれくらいの期間がかかりますか?
  6. システム図は問題、解決策、あるいはその両方を示すべきですか?

これらの質問に答えるために、効果的なシステム図作成の原則と実践を、躊躇のもととなるよくある誤解から区別します。これらはすべて、次の表に示されています。

質問

よくある誤解

原則

実践




「システム図は、完全なシステムを把握するためのものである。」

効果的なシステム図は、システム全体を描写するのではなく、焦点をあてる問い(「なぜ?」から始まる)への答えを提供します。

ステークホルダーが答えを見いだしたい「なぜ?」の問いに共通理解を築くことを支援します。例えば、"なぜ我々は、しばしば最善の努力にもかかわらず、この目標を達成できないのか、あるいはその問題を解決できないのか?" これらの問いは、有用な分析のための境界範囲を確立します。




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「システム図作成の主たる意義は、図そのものにある。システム図は、慢性的で複雑な問題に対する確定的な解決策を提供する。」

システム図作成のプロセスが、システム図自体と同じくらい重要です。システム図が効果的なのは、問題の根本原因についての生産的な会話を誘発するからです。さらに、問題の解決に向けて、それぞれ主体的責任の視点を刺激します。そして、どのようにして前進するかの仮説を提供してくれます。

集団としての好奇心、気づきの深まり、主体的責任、継続的な学習を刺激するツールとしてシステム図を活用します。



「理想的なシステム図作成者は、変化をすべき「外にある」何かを客観的に観察する人である。」

理想的なシステム図作成者は、変えたいと思っているシステムの一部となる人たちです。

当初は専門家の助けを借りて、システムの中の人々がシステム図を作成します。自分自身が問題の一部であると考えるように促すことで、解決策の一部となれると自信を持てるように励まします。









「システム図が包括的で詳細であればあるほど、その有用性が高まる。」

効果的なシステム図は、アインシュタインの言葉を借りれば、状況の複雑さを「可能な限りシンプルに、しかしシンプルにし過ぎないように」描きます。繰り返し起こるシステムの原型(古典的な物語)に基づいたシステム図は、理解しやすく、かつ十分な複雑さを取り入れていることがしばしばです。

システム図を使って、なぜ人々の善意の努力が不十分で望ましい結果が得られなかったのか、という人々のストーリーを語りましょう。可能ならシステム原型を使用して、ストーリーボードとしてシステム図を構築します。




「包括的なシステム図を作成するには数ヶ月を要する。」

有用なシステム図は、数週間か数日でも作成できます。

主要なステークホルダーを巻き込み、オーナーシップを構築するための十分な時間を含む、システム図作成のプロセスを計画してください。このプロセスでは、多くの会話が鍵となり、システム図作成そのものにかけるよりもより多くの時間をかけます。






「問題を説明するシステム図と、解決策を示すシステム図を組み合わせてもよい。」

システムを変えるための最初のレバレッジポイントは、問題を解決するために最善の努力をしているにもかかわらず、なぜその問題が続くのかについて人々の理解を深めることです。そのためには、まず現状のシステム図を作成してから、システムをどのように進化させたいかを示すシステム図を作成するのがよいでしょう。

まず、なぜその問題が継続しているのか、そして、知らず知らずのうちにその問題を継続させてきた自分自信の責任を十分に理解してもらいましょう。そして、それらを十分に理解した上で、どのようにすればシステムがより良くなるのかをシステム図に落とし込んでいきます。

重要なのは、システム図が何であるかではなく、システム図が何をするかであることを忘れないでください。次回、システム図を検討する際には、効果的な結果を得るために、上記表の右側の列に紹介する実践を活用してみてください。


さらに詳しく知りたい方は、ディヴィッド・ストロー氏の著書『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』(英治出版、2018年)をお読みください。

2021年2-3月には、日本向けにディヴィッド・ストロー氏によるオンライン公演とワークショップを開催予定です。

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