News & Columns

ニュース&コラム

SoLグローバルフォーラム: グローバル社会における個人と社会の変容を目指す(3)

2014年07月10日

SoLグローバルフォーラム:グローバル社会における個人と社会の変容を目指す(1)

SoLグローバルフォーラム:グローバル社会における個人と社会の変容を目指す(2)

からの続きのコラムです。

---------------------------------------------------------------------------------------------

3日間にわたるフォーラムに参加して感じた、SoLグローバルフォーラムの特徴は何でしょうか?

まず挙げられるのが、「実践」に焦点をあてていることです。理論としては、学習する組織の3本柱であるシステム思考、共創的な対話の展開、志の育成を中心に、統合理論や発達理論、U理論の活用、マインドフルネスの実践、アートを採り入れた具現化などが挙げられます。それぞれある程度基礎知識をあることを前提に、導入的な説明はほとんど行われず、実践例の紹介ないしは参加者による実践の場にしていることです。

学習する組織の心得のない方にはややとまどうところもあり、最新の理論を求める方には今回特に目を見張る新しいものはないかもしれませんが、ここ数年実践で重視されている理論のコツの実感にはちょうどよい場であり、とりわけ自分自身の課題を持ち寄る方には、安全で多様な視点からアイディアを磨くには最適の場であると言えるでしょう。また、共有された実践例では、組織変革の観点では保守的と見られがちな郵政公社や国鉄などの国営企業においても、システム論や対話などの実践が数千人から数十万人規模で展開されていることには驚きを覚えました。

また、実験の場であることもこのフォーラムの特徴です。例えば、前回開催のオマーンでは東西交流と、特にイスラム教圏の文脈でいかに女性の声を対話に取り上げるかに焦点があり、このフォーラムをきっかけに中東地域での女性教育の基盤づくりが大きく前進しました。今回のパリでは、世代を超えた対話の実現に向けての実験がなされ、冒頭の基調講演では壇上の半数を20代の若者が占めて発表を行い、その後も若者による企業トップへのQ&Aセッションや、ピーター・センゲと若者たちの対話など、舞台の中心に数多くの若者が登場しました。社会の未来に関して、辺境に位置して聴かれぬ声を対話の場で聴くチャレンジの姿勢を深く印象づけました。

もう一つの実験のポイントは、グローバルな場での対話の推進です。英語を基軸言語に、全体会議ではフランス語と英語双方の同時通訳で行われました。英語圏でないフランスでの開催ですが、35カ国から集まった参加者に関しては英語を母国語とする者は1割ほどで、7割は英語を外国語として流ちょうに話せるレベル、2割は英語がほとんど話せない状況での対話となりました。ファシリテーターは、フランスを中心にした欧州の混成チーム20名ほどでしたが、英語を母国語とする者はわずか一人で、大半は流暢に英語を話していたものの、中には英語アクセントの強いファシリテーターもいて、指示が聞きづらい場面や要領をえない場面も見られました。意志疎通ができたときには多様性が活かされる環境である反面、英語がたどたどしい場面では聴く側の集中力や辛抱強さが求められ、慣れない者には大変なセッションもあったようです。同時に、同じく英語を母国語としない日本でのコミュニケーションに比べると、深い内省に基づく会話や概念的な会話などより高いレベルで十分に意思疎通がされていることを実感し、全般的にはグローバルな会議の醍醐味を堪能できる場でした。

フォーラム全体として、よりよい社会や経済の構築のために、おごることなく自らを磨き続けることができているかを内省し、多様なメンバーでの安全な器に身を置くことを実践、挑戦する場であったといえるでしょう。大いに学びを実感するとともに、もしアジアグローバルな会議を開催するとしたら、どのように話し合って準備を進めるのがよいか、深く考えるきっかけともなりまた。次回のグローバルフォーラムは、開催地は未定ですが、2016年に実施することが予定されています。

関連する記事

Mail Magazine

チェンジ・エージェント メールマガジン
システム思考や学習する組織の基本的な考え方、ツール、事例などについて紹介しています。(不定期配信)

Seminars

現在募集中のセミナー
募集中
現在募集中のセミナー
開催セミナー 一覧 セミナーカレンダー