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システム思考でみるプロジェクト・マネジメント(3)

2013年08月27日

前回に続き、システム思考に基づくプロジェクト・マネジメント事例を紹介しながら、どのように知識創造型の「学習する組織」を築けばよいかを紹介します。)

波及効果が累積することによってティッピングポイント(閾値)を超えると、「ドミノ効果」といわれる悪循環を引き起こします。

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  • 一般にやり直し作業は、当初よりも多くの工数が必要になる。短期間に遅れを挽回しようと、作業フローや情報フローを待たずに後の工程を同時に進行したり、順序を入れ替えて作業したりすることによって、生産性が低下して進捗が遅れ、ミスが生まれやすくなり、さらにやり直し作業が増える。(R5)
  • やり直しが新たな作業を生み、やり直すべき作業が見つかる前に進んでいた作業もムダになる。その結果、雪だるま式にやり直し作業が増える。(R6)
  • やり直し作業の増加がスタッフのモラルに影響を与え、品質と生産性を低下させる。それによってさらなるミスが生まれ、やり直し作業が増加する一方、進捗の遅れはますます広がる。(R7)
  • たび重なるやり直しと進捗の遅れへの徒労感からモラルは下がり続け、スキルを持つスタッフが退職して人数が減っていく。少なくなった人員でなかなか減らない作業を抱える現場は、ますます燃え尽きる悪循環へと陥る。(R8)

こうした悪循環の「ドミノ効果」から想定外の資源投入が必要となり、プロジェクト内にとどまらず、ほかのプロジェクトにも影響を与えます。クライアントからの仕様やスコープ変更の要請によって作業量が増え、信頼の低下から頻繁にレポート提出を求められ、もはや期限延長が難しくなるとプレッシャーがさらに高まり、納期の遅れから訴訟となった場合は、経営陣やマネージャーの多くが訴訟対応に追われます。

プロジェクトのライフサイクルにおいては、こうした構造から次のような挙動が生じます。

  • 生産性: 波及効果によって生産性は低下し、長期にわたってその影響が残る。変更が多いほど、生産性の低下も激しい。
  • 人員数: 生産性や品質への波及効果のために必要となる人員数が増加し、リワーク・サイクルによってより長期間にわたって人員数を必要とする。その影響は変更が多いほど幾何級数的に伸びていく。
  • 進捗: 完成作業の比率を進捗カーブとすると、リワーク・サイクルと波及効果によって、進捗カーブは予定よりも下方に押し下げられ、頭打ちとなったり低下することさえある。たとえ予定を再設定しても、その後も上下動を繰り返すこともある。

波及効果は、直接効果と同程度か、ときには数倍にも及びます。悪循環のスイッチが入ると、波及効果によるコストやスケジュールへの影響は、プロジェクト1~2つ分に匹敵することすらあります。しかし、こうした現実のプロジェクトの構造やライフサイクルでの挙動の理解をふまえれば、プロジェクトへの悪影響を最低限に抑え、最善の成果を出すマネジメント方針を立てることができるのです。

プロジェクトの途中で、当初の予定を変更する必要が生じることはしばしばです。次号では、いつ、どんな変更をどの程度、どのようにすればいいのか考えます。

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