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学習する組織入門(2) 「志を立てる力(1) 個人のビジョン」

2007年08月06日

自分や人を動かせる具体的なビジョンが変化の原動力となる

学習する組織の求心力は、常にビジョンにあります。ビジョンは人や組織の成長の原動力となるからです。

「ビジョン」とは、まだ現実にはないけれど、私たちの心の中に描くことができる未来の姿、憧憬です。将来自分や組織や社会がどのようになっていたいか、その「なりたい姿」がビジョンなのです。あなたは、7分後、7日後、そして7年後に、どのような自分でありたいですか?

例えば7年後のビジョンを描いたとき、「○○のプロフェッショナルになりたい」「最高の○○をつくりたい」「○○を通じて人々に貢献したい」など、さまざまなビジョンがあるでしょう。ビジョンは、できるだけ具体的に描くのがポイントです。その情景がリアルであればあるほど、原動力は強くなります。

具体性の無いビジョンや単に現状の否定になっているビジョンでは、変化の原動力にはなりません。逆に言えば、よいビジョンとは、どれだけ自分や周囲の人を動かせるか、によって決まってくるといえるでしょう。

ビジョンは、行動することによって現実のものとなりえます。ビジョンを達成するために必要な行動は、必ずしも今できることの範囲とは限りません。むしろ、原動力となるようなビジョンは、しばしば今の自分の能力を超えるチャレンジを課すことになるでしょう。

「現実」と「なりたい姿」のギャップの間に生まれる力を推進力に

そこで重要なのが「キャパシティ・ビルディング」です。キャパシティとは「能力」です。頭脳や体力のみならず、実現のためのしくみなども含みます。そのキャパシティを「ビルド(構築)する」ことを、キャパシティ・ビルディングといいます。自分のやりたいことが、今できる以上のことをできるようになる原動力になって、自分の能力や意識を高める―それこそが学習を進める最大の源泉にほかなりません。

なりたい姿と今の現実の間に生じるギャップは緊張感を作り出し、自然の人間の欲求として、このギャップを埋めようとする力が生じます。ギャップを縮めるには、2つの方法があり、まず一つは行動をすることによって現実を変え、なりたい姿に近づくこと。そしてもう一つは、なりたい姿を現実に近づけることです。なりたい姿というのは常に時間軸をどれくらい長く取るかとの兼ね合いでもありますから、短期的にはビジョンをこまぎれにして、それらを積み重ねることで長期のビジョンに近づいていきます。

ビジョンの力をうまく活用して緊張感を維持することによって、「クリエイティブ・テンション(創造的な緊張感)」という、きわめて高い創造性を生み出すことができます。現実にばかり引っ張られたり、現実から逃げようとしたりしていては、よいパフォーマンスは得られません。ビジョンによって方向付けされた、良質で適度な緊張感が自らの力を最大限に発揮してくれるといってよいでしょう。

ビジョンの力を最大限発揮するためのマネジメント

このクリエイティブ・テンションの対極にあるのが、「エモーショナル・テンション(感情的な緊張感)」です。エモーショナル・テンションは、クリエイティブ・テンション同様現実が理想どおりにない状況から生じますが、大きな違いは心理的な不安要因が、しばしば外部からの脅威に敏感に反応してしまうことです。上司や組織からの強いコントロールはその典型です。ノルマの未達に対して懲罰的な制裁を課すなどのやり方は、緊張感を高めますが、クリエイティビティを大幅に損ねます。また、不正に走るなど手段と目的を取り違える原因ともなります。

学習する組織では、エモーショナル・テンションではなく、クリエイティブ・テンションを高めるためのマネジメントが重要になってきます。常に、自分のやりたいこと(ビジョン)とそのために修得すること(キャパシティ・ビルディング)を意識し、計画化して、振り返りを行います。なりたい自分に向かってたゆまなく研鑽することによって、パフォーマンスは高まり、目的を効果的に達成できるようになっていきます。そして、人は自らが学びたいことこそ、自発的に、かつ効果的に学ぶのです。


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