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30年以上のファシリテーション歴と国際賞受賞歴のあるジリアン・マーティン・ミアーズ氏が、ファシリテーションを通じて学んだことお裾分けする「ブライト・グリーン・ラーニング・ブログ」から、人気の記事を紹介しています。今号のテーマは対立についてです。とかく「対立」を避けがちな日本の場において興味深い記事としてご紹介します。
「対立を生み出す練習」と聞いて驚く人もいるのではないでしょうか。なんでまた、グループプロセスでわざわざ対立を生み出すのでしょうか。多くの参加者たち、そしてもちろんファシリテーターたちの大半は、対立を避けるためならどんなことでもします。対立は何かのタスク達成のためには建設的でないとみなされているのです。
少しだけ時間を取って、「その逆が真実だったら」と想像してみましょう。
今週、私たちは「ファシリテーションを超えて:グループとチーム強化のための介入スキル(Beyond Facilitation: Intervention Skills for Strengthening Groups and Teams)」というワークショップを開催しました。グループ・プロセス・コンサルテーションのトレーニング・ワークショップを改変しはじめてから今年で2年目になります。「あなたには黙秘できる権利がある(You have the right to remain silent)」というタイトルで、昨年行われた初回ワークショップもブログ記事を書いています。
対立を生み出すことが高いパフォーマンスにつながる?
「対立を生み出す」ワークは、今日では繰り返し行っている中心テーマで、4日間のトレーニングのうち、3日目に行われます。まず、「ロゴ・マン」と呼ばれる経営シミュレーションからスタートします。一見、見た目には単純なチームビルディングのようですが、実のところ90分間の本格的な生産プロセスを伴う経営シミュレーションを行います。このゲームでは、事業構想に始まり、タスクの理解、役割や成果物の設定、製造と物流のための戦略、意思決定を行い、品質基準に従いながら最終製品のロゴ・マンを組み立てます。興味深いのは、私たち講師陣リーダーである、チャック・フィリップの言葉です。「この経営シミュレーションからの学習ポイントの一つとして、メンバー間に対立を誘発するチームは、パフォーマンス(ロゴ・マンの製作リードタイムで測定)が最大になることだ」というのです。
「対立=悪いもの」という誤解
この「対立を誘発する」という考えについて、一般の人たちはどう思うのでしょうか。ほとんどの場合、「対立は悪いもの」という前提がすぐに思い浮かぶでしょう。対立は戦いであり、特定の個人に対し向けられるものであり、全力で避けなければならないものと考えるのです。そのため、対立が高まりつつあるときに取られる典型的な反応は、何とかその対立をなだめるか、抑えるか、あるいは単に無視するかです。チームリーダーであれ、チームメンバーであれ、いずれかになりがちです。そしてこれはファシリテーターも同じことです。誰もが対立を積極的に抑え込もうとします。でも、そういった反応は、グループ内での意見、アプロ―チ、手法の違いについて表出化させ、違いについて考える機会を奪うことにもなるのです。これらの対立は実際のところ、高いレベルのパフォーマンスや理解に向かって動くことのできるカギになり得るものかもしれないのに。
もちろん、対立にも様々な種類があります。私たちが生み出したい対立は、人々の前提や考えにぶつかることから生じるものです。対立がチームを新しい、異なるレベルに引きあげ、前提を検証し、新しい意見を創り出し、その結果より速くより効果的な結果が生まれる可能性があるのはこのような対立です。
ですから、今日のワークショップでは、「対立」を考え始めるために必要なスキルの一部を取り扱いました。対立を「戦い」にしないようにするためのものです。そして、グループをサポートしてパラダイムシフトと新しい可能性に到達するような瞬間に案内すること。これは私たちが今日ずっとやってきたことです――グループがかしこまった状態のままでいすぎないようにするために、最善を尽くしたのです。
原文:ジリアン・マーティン・ミアーズ
翻訳・小見出し追加:チェンジ・エージェント社
原文(英語)
http://welearnsomething.blogspot.com/2008/12/practicing-creating-conflict.html
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