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新年のご挨拶2025(前編)

2025年01月08日

新年あけましておめでとうございます。
新年にあたり皆様のご健康とご多幸を祈念申し上げます。

2025年最初のメルマガでは、2024年を含む創業からの20年間を振り返り、今後の展望を述べます。長文となりますので、2回に分けてご紹介します。

2024年の振り返り

2024年、オープンセミナーでは、システム思考などの学習する組織関連の定番セミナー(2日間)を17回、TOC、社会的インパクトなどの社会変革セミナー(2日間)を3回開催して、変化・変容のための方法論を集中的に学ぶ機会を提供しました。より継続的に学ぶシリーズとして、「チェンジ・エージェント・アカデミー第16期」(6回)、「システム思考家 実践道場」(6回)、「レバレッジの効いたリーダーシップ」(3回)では、実践への落とし込みを繰り返し訓練する機会を提供しました。

今年、特に印象的だったのは、「システム思考実践発表会」の開催です。20年目にして初めて、道場参加者および法人研修受講者の方からオープンに参加者エントリーを募り、選択した課題のシステム分析および施策について発表披露する機会を設けました。第1回グランプリに輝いた飲食店経営者の岡田哲生さんにか自律的な組織運営に向けての課題と施策について深い洞察を披露していただきました。

また、ソーシャルおよび教育セクター分野で活躍する米国のリンダ・ブース・スウィーニー氏を5月に招聘し、ワークショップ「組織リーダーのためのシステム・リーダーシップ~複雑な課題への革新的な対応」を開催しました。優れたシステム・コミュニケーターとの定評あるリンダからシステムチェンジ文脈でのリーダーシップについて学ぶと共に、日本での事例についてシステム思考などの手法を適用し、議論しました。

年間通じて法人向け研修・ファシリテーションを119日、講演およびMBAMOT授業を23回実施しました。法人向けの2024年の特徴は、社会課題に関するマルチステークホルダー対話のファシリテーション要請が増えたことです。多様な学びプロジェクトを通じた不登校に関わる課題のシステム構造分析をファシリテーションした案件では官民学の有識者および当事者たちが対話を行いました。また、鹿児島県では多方面で活躍する30人あまりの人たちと地域活性化および「ローカルゼブラカンパニー」の役割についてステム構造分析やセオリー・オブ・チェンジを策定しました。今後、こうしたマルチステークホルダーの集まりは日本でも増えていくことを予感しています。

創業からの20年間を振り返る(1)基盤形成期(2005年~2009年)

今年はまた、20054月の創業から20年の節目となる年でもあり、今後の展望への基盤として、創業からの足取りを振り返って見ました。

創業当初は、企業のCSR戦略に関するコンサルティング案件などを進める一方、いかにマネジャーや実践者たちが効果的に変化のメソッドを身につけるかの研修プログラムの開発とデザイン練り上げに注力していました。

20057月、システム思考の大家デニス・メドウズ氏と能力開発エキスパートのジリアン・マーティン・ミアーズ氏を招聘して、最初のシステム思考研修とトレーナー養成講座を開催しました。同年10月には枝廣淳子と小田理一郎が講師となって、システム思考トレーニングの提供を始めます。いただいたフィードバックから改善を重ねて、現在の2日間のカリキュラムへと発展していきます。JICA、井村屋、伊藤忠商事などの組織がシステム思考に関心を寄せて、法人研修サービスも始まりました。

20079月、アメリカでの実践者たちの支援をえてより学習する組織セミナー提供を開始します。初回は、組織変革ファシリテーターとして実績豊富な渋谷聡子さんと一緒に開催しました。また、20081月には、学習する組織提唱者のピーター・センゲ氏を日本に招聘し、野中郁次郎氏との対談、リクルート、日産の責任者たちを交えたパネルディスカッションを開催しました(組織学習協会SoL主催)。

時代は折しも、地球温暖化の課題に注目が集まり、枝廣が首相、経産省、環境省へ諮問する諸委員会の委員に就任して、システム思考を駆使しながら温暖化問題の重要性を広く訴えました。チェンジ・エージェント社でも気候変動、生物多様性、サステナビリティ一般に関する講演、研修などのイベントを独自に開発・開催していきました。

システム思考や学習する組織の認知を広げることも創業期の課題でしたが、そこで大きな役割を果たしたのが講演、書籍、ウェブサイトとメルマガです。枝廣はもとより環境問題、エネルギー問題など幅広く講師として呼ばれていました。複雑な課題(Complex Problems)には要素還元線形の論理的思考ではなくシステム思考が、そして計画やコントロールではなく共有ビジョンをもとに組織・セクター横断の人々が創発、適応が求められることを訴えます。最初の2005年だけでも講演参加者4千人を超え、その後も毎年数千人単位の人たちへ伝え続けました。関連する書籍も数多く出版しますが、とりわけ『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか』はロングセラーとなって、2万人以上の人たちに読んでいただきました。

創業からの20年間を振り返る(2)流動・多様化期(2010年~2014年)

2010年からの5年間は、それまでの基盤をもとにさまざまなイニシアチブを立ち上げる時期となりました。中でも特徴的なイニシアチブが招待制のミーティング「清里合宿」です。これは枝廣が2002年から参加しはじめたシステムアプローチをベースにサステナビリティの研究者及びアクティビストの国際ネットワーク「バラトン・グループ」にヒントを得ました。清里合宿のメンバーには、2005年より「しなやかに進化し続ける組織を考える研究会(通称:しな研)」を由佐美加子さんと共に主宰した仲間たちをはじめ、その後ペガサス・カンファレンス、SoLイベントなど海外でのシステム思考、学習する組織の実践を学び合う海外カンファレンスで新たに出会った仲間たちが合流し、そこから有機的に広がっていきました。結果として、国内での人材開発、組織開発に関わる若手・中堅のプロフェショナルたちとソーシャルセクターで働く社会起業家たちが共にサステナビリティや社会の課題に向き合うコミュニティに発展していきました。

20105月、アダム・カヘン氏が2冊目の著書『未来を変えるためにほんとうに必要なこと』を出版して来日します。U理論をもとにしたワークショップ「チェンジ・ラボ」を日本で実施するにあたり、小田が「ラーニング・ジャーニー」のデザインに参画します。日本の中間山地での限界集落、農業、生態系などの課題を現場で目の当たりにして、私自身U理論のプロセスを体感しながら、さらにもう一つのイニシアチブ「サステナブルフードビジネス研究会」を起ち上げました。

この研究会は、食のサプライチェーンに関わる企業十数社でCSRやサステナビリティに関わる方たちを集めて、ソーシャルセクター、生産者、消費者、生態系学の専門家などさまざまな分野の方たちを招き、対話を通じて食のサプライチェーンのサステナビリティについて、共に学び合うコミュニティとして取り組みを始めました。これは、友人のハル・ハミルトン氏とアダム・カヘン氏が初代共同リーダーを務めたセクター横断コンソーシアム「サステナブル・フード・ラボ」に着想を得たものでした。

これら2つの「コミュニティ・オブ・プラクティス(COP)」を主宰する場では、豊かな越境学習が行われ、参加者たちの視野や意識が広がっていきました。折しも、20113月には東日本大震災と福島原発事故が発災します。この後、清里合宿のメンバーたちは、東北に足繁く通い、あるいは移住して、復興に向けた課題に向き合います。チェンジ・エージェントの枝廣と小田も、発災直後に宮城県石巻市に拠点を構えたNGOであるJENとのご縁をいただき、南三陸地域の復興の課題へ向き合う人たちを間接支援しました。

震災支援のさなかの、20116月ピーター・センゲ著『学習する組織』を上梓します。複雑な課題に取り組むリーダー、組織、コミュニティにとって、複雑に絡み合う問題状況や未曾有の課題に、どのようなあり方、実践をすればよいについての指南となり、また読者数も6万に及ぶヒット作となりました。また、枝廣淳子著『レジリエンスとは何か』を上梓して、街だけでなく人や子どもにとって、いかにレジリエンスというシステム特性が重要かについて訴えました。

チェンジ・エージェント社としては、日本興亜損害保険の資金援助を受けながら、東北で3つのプロジェクトを実施しました。日本の学生7名と世界四大陸からの学生7名が共に1週間被災地を訪ねて回り、対話を続けるラーニング・ジャーニー、ミュージカルのプロたちが被災した子どもたちとともに講演を行うオリジナルのミュージカル、そして、東北3県で復興に向き合う若手リーダーたちを集めたリーダーシップ研修です。由佐美加子さん、ボブ・スティルガーさん、橋本洋二郎さん、佐々木薫さん、そしてCARE WAVE AIDのみなさんと共に、駆け抜けるような日々を過ごしました。

また、枝廣は姉妹会社であるイーズ社を通じて、原発に関わる「賛成」「反対」「脱原発」などさまざまなポジションの人たちが、互いを尊重し、聞き合いながら話す市民対話を呼びかけ、日本各地で市民対話の会を実施しました。また、専門家(大抵男性)たちの意見を中心に集約されがちなエネルギー課題について、「女性の視点からエネルギーを考える~エネ女の集い」「若者の視点からエネルギーを考える~エネ若の集い」を企画し、社会の周縁にいる人たちの声をエネ庁や経産大臣に届けます。こうした取り組みから柏崎市長の依頼を受けて、「対話から生まれるまちづくりをめざして~これからの柏崎とエネルギーの取り組みを考える」を3年にわたってファシリテーションしました。

食料関連や震災復興、エネルギーなどの社会課題に取り組みながら、セミナーや研修のメニューも拡充していきます。「ラーニング・ジャーニー」「ストーリーテリング」「シナリオ・プランニング」などです。アダム・カヘン氏の3作目となる『社会変革のためのシナリオ・プランニング』を2014年に上梓し、著者を招聘して行ったラーニング・ジャーニーXシナリオ・プランニングのワークショップ「働き方の未来2030」は、日本の職場や労働環境の意味を深める上でとても示唆的なものとなりました。

熊平美香さんら主宰の未来教育会議が企画した教育に関わるマルチステークホルダー・ダイアログの数ヶ月にわたるプロセスの最終局面で、教育に関わるシナリオ・プランニングを実施し、そこで策定したシナリオをもとに、10を超える新しい教育に関わるセクター横断のイニシアチブを生み出しました。小田も、土屋恵子さん、桑原香苗さんらと共に、「ティーチャーズ・イニシアチブ」という21世紀型スキルを学ぶための夏合宿、NPO設立を支援しました。

2010年からの5年間、震災後の激流に大きく揺れながらも、基盤形成期に築いたエコシステムを基盤に、さまざまな新しいイニシアチブや対話・協働の文化を築いていきました。

(後編に続く)

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