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【15期生 受講者インタビュー】チェンジ・エージェント・アカデミー 「学習する組織を導くリーダーシップ 集中プログラム」

2024年04月24日

今年、9年目を迎えるチェンジ・エージェントアカデミーは、2024年6月に16期生を迎えることとなりました。今回は、昨年修了された15期生の卒業生の木下真琴さんに、アカデミーを通じて個人としてどのような気づきがあったか、また、その気づきを組織の変容にどう生かしていらっしゃるか、お話しを伺いました。
インタビューを通じて、会社経営者として、個人と組織の一貫性を大事にしたいと心から思いながらも、矛盾する自己への気づきや葛藤、しかしそれらをありのままに受け容れ、業界の変容へも踏み出そうとする未来に向けた彼女のチャレンジと情熱のまなざしを感じました。(2024年4月実施)

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Q. チェンジ・エージェントのアカデミーを知ったきかっけは?

  • 2022年夏からピーターセンゲの『学習する組織』を読んだことです。
    ある経営のビジョンを語る場で、45人の会食の際に「こういう組織作りをしたいと思っている」と熱意を持って話したら、「それは『学習する組織』だと思いますが、そのことを言っているのですか?」って参加者から聞かれたんです。その時は、「学習する組織」って知らないと話すと、絶対読んだらよいですよ、と言われて『学習する組織』を読み始めました。

    歯が立たないなぁと思いながら、年末まで半年かけて読むと、分からないなりに、自分の共鳴するビジョンに近しいことが体系だてられて書かれているなぁと非常に感銘を受けました。 その後、インターネットで小田先生の講義を発見し、直接教えてもらえるなんてよい機会だと思って、申し込みました。なにか一つのところに導かれたみたいな、そういう感じでした。

Q. 公開講座の単発でなく、アカデミーを受講した理由は?

  • 当時は、学習する組織の全体を第三者に体系的に伝えられるほど理解していたわけではなかったので、これを言語化して、私なりに仲間に表現できるものを身に付けたい、という思いがあったんです。それで、学ぶなら全部学びたいなって思って、単発の"アラカルト"でなく"フルコース"であるアカデミーを受講しました。

Q. 当時、経営者としてどのような課題を感じていたのですか?

  • 201810月に今の会社の代表として就任しました。当時から、組織の面では一貫性・整合性、個人の面では自己一致をテーマに置いています。組織と個人の両者の幸せには、両方とも欠かせないし、つながっている、という私なりの仮説を持っていたからなんですね。

    当時は、まだ自分の中で揺らぎもありました。それでも、3年間の経営を通じて、 数字として株主から求められる単なる数字だけの結果ではなく、私の情熱の源泉にある「一人一人が自己一致して、自身のポテンシャルを最大限発揮した上での結果の景色を見たい」っていうことは絶対に外せないと強く持つようになっていったんです。経営者の責務として、株主から求められる結果を全うしたいとはもちろん思っているけれど、一方で、なんでもいいから結果を出せばよいわけではない。私の喜びにまったくつながらない、と経営を通じて確信に変わっていきました。

    その思いは、私が10歳の頃に父の事業が倒産したことに由来します。

     当時、まだ幼いながらも、 父の姿が本来の父のあり様と乖離していく、つまり本当の父の奥深くにあるものと、表面に出る行動や言動が、どんどん乖離していく様子を見たんです。その乖離状態が連鎖していって、会社が悪化するサイクルに入ってく様子を見ました。その父の背中は、自分の人生を生きることが大切だ、と教えてくれたように思うんです。父の一番の悲しみは、父が自分の人生を生きることができなかったことではないかと私は捉えていて、私もその姿が悲しくて、ずっと解消したい、という気持ちがあります

    だからこそ、いただいたご縁の中で、今の現状に自分自身も自己一致をさせたいし、働く仲間たちの自己一致も実現し、その結果としての経営が順調にいっている、という循環をつくりたい、という意図を持っているんです。

Q. アカデミーの学びのプロセスを振り返って、印象に残っていることは何でしょうか?

  • 自分のメンタルモデルの一番奥側で、自分は真に何を望んでいるんだろうか、という問いを、アカデミーの仲間と一緒に学べたのはすごくよかった。その意味で相互コーチングは印象的でしたね。

    相手が話す内容を集中して聞く機会だったので、学びの当事者でありながら客観的な視点で構造を見ていったり、その方にとってベストな問いはなんだろうって考えながら参加していました。自分自身のケースだとつい主観的になりますが、相手が課題を出してくださることで、客観性を持ちながらも没入して探究できる。すごく印象に残っています。

    また、受講した研修で特に心が躍ったのは、「行動探求」で扱った行動論理カードですね。

    三人で一緒にワークをしましたが、価値観があまりに三者三様でした。改めて、価値観に優劣はなく、それぞれがなにを大切にして生きているかをお互いに知ることこそが、互いの関係を深めるスタート地点に立つことになるんだな、ということを体感しました。

    それがきっかけで、価値観を共有できるプログラムを自分なりに設計して、正社員6人と年明けから月1回行っています。自分の目的や、自分が何者であるかを考えて、その価値観があるからベストを尽くしていることを、私も含めてみんなで認識しあっています。

    背景を知り合うことで、表面的な互いの理解を超えた価値観の違いに気づけるし、相手をもっと深く尊重できるようになると思います。頭で理解するのではなく、感情的にもつながることができると、深い相互理解に進めるし、違っていいんだ、ということを実感できるように思います。

    時に、人の価値観はこだわりにもなって、そこから抜け出せないサイクルに没入するというマイナス面も持っています。けれど、価値観の違いを知れば、ほかの人のもつ別のサイクルを知ることができます。そうすると、自分が抜け出せないサイクルに没入したときに、未来視点からメタ認知すれば、ほかの人から学んだ別の選択肢があった、と気が付くこともできるんですね。

    また、私自身が過去たどってきた、自分では正しいと思っていた価値観に基づいた成功体験が、相手への無意識の期待につながってしまうことにも気づけるようになりました。「この職位なら、このぐらいやってよ」といった期待が出てしまって、結果として、相手のポテンシャルの発揮を阻害していることを、業務からちょっと離れた場で話をすると、またやっちゃっているなって、気づけますね。

    多様性って大事だよねっていうレベルではなく、実際にそれに向き合うためにはどうしたらいいんだろうっていう、アカデミーで学んだ問いに対して、いま、自分でできることを実践中です。

Q. 相互コーチングでは互いの現実のケースから学びを深めますが、印象に残ったことを教えてください。

  • ある事例提供者が「もうやりようがない、お手上げだ」と思っている事例を題材にした回がとても印象に残っています。その方が、相互コーチングの対話のプロセスで問われることに対して答えるにつれて、自己理解を深めていって、他人が変わってくれなければいけないと思っているその事例に、自分も関与していることを見つける瞬間を見たことです。最終的にはご本人がもうスッキリされた表情をされてたんですよね。自分を責めるわけでもなくて、自分にもこの課題を解く鍵をもっているんだって発見した瞬間を見た気がしたんです。

    問題は自分の外にあって、解決されることを待っている自分、という構造から、実は自分自身にも鍵があって、明日、自分ができることを見つけられた瞬間って、人はものすごく自由だな、清々しいなって思ったんです。それがとても印象的
    でした
     重要だったのは、問いを立てることでした。対話を紡ぐことで、ご本人の解放といった自由の鍵を発見するお手伝いをすることができる問いの力を感じることができました。相互コーチングは4ー5人で行いますが、みんなの問いがサポートし、すごくいい体験でした。
  • そして、もう一つ発見があったのは、善意からであったにせよ、私が手っ取り早く問題解決することは、相手が問題の構造を発見し、解決策を探索する機会を奪っていた、ということです。相手は自分で鍵を見つける爽快感を感じられていないはずなんですよね。「小善は大悪に似たり」が言い得て妙で、私自身が善意からと思ってしまっているのも質(たち)が悪いな、と思います。
     ただ、相手の問題解決を待つには時間がかかります。なので、つい言いたくなってしまう気持ちが抜けきれていないんですが、説教して行動修正することはやっちゃいけない、って気が付きました。みなさん、ごめんなさい、って本当に思います。

    これまで、よかれと思ってやっていたことを、もし捨てられていたら、こういう可能性があったのかな、ということを相互コーチングを通じて知りました。相手の一番望むことや相手の気持ちで、問いを投げかけることができるようになりたいと思います。

Q. この5か月間でご自身が得たことを3つ挙げるとしたらなんですか?

  • それまでは問題があったら解決方法を提示することが正しいというコンサルの成功体験があって、それを続けてきたんですが、むしろ、私が目指す一人ひとりの自己一致を実現するためにもっとベターな手段を得られたこと、これが一番です。無意識下ですぐ戻ってしまうのですが、メタ認知して自分を向上させることができたっていうのは第一です。

  • 第二は、私が目指したいものに向かうため、もしくは選択してもらうための共通言語を社内に宿しつつあること。これは、システム思考という言語です。

  • 三番目は、感情が乱れたときに自分への「問い」で認知を意識に高める方法です。

    時には、自分自身の感情が乱れることがあるんです。その時、不服で捉えるのではなく、感情の乱れを自覚する。そして、今この瞬間に相手に何が起きているんだろうか?とか、今この瞬間に私は何を望んでいるんだろうか?今この瞬間に自分が望む結果に対して何が邪魔しているんだろうか?と探究する。

    自分の成功体験から要求してしまうスピード感や質相手の行動がずれている感じた時苛立ちは、結局、自分の感情へ戻ってくることを客観視できるようになりました。

    自分が最優先にしたい目的と、相反する行動をとっている自分に気づき、さらに、自分に対してあなたは何を選びますか?と、感情を選ぶのか、目的を選ぶのか、という問いに変える選択をできるようになったことは大きな収穫です。

Q. 社内のメンバーの変化を感じることはありますか?組織に見出せた新たな変化や発見はありますか?

  • 個人の自己一致が組織の一貫性、整合性につながっていき、一人ひとりが好循環の起点となる企業を実現したい、という私が目指していることを、みんなに伝えることができ、またみんなもそれに対して忖度せず、感じていることを話してもらえるようになってきたことがありがたい変化と感じています。
    「ちょっと理解できないです。ただ、ここの部分はいいなと思います」と話してもらえるようになってきたんですね。私が、何をなぜ実現したいのか、ということが一人ひとりに伝わってきたと思うし、それによって、「ここには違和感がある」とか「賛同する」などと、グラデーションのある会話ができるようになってきたことが良かったな、と思っています。

    また、社内で共通言語をつくる必要があると思って、希望者にはチェンジ・エージェントの研修を受けていただける機会を提供しています。
    私の場合は、「学習する組織」の学びから始めて、この順序がすごく合っていたんですが、みんなは「システム思考」が性に合ったようです。何人もが受講してくれました。それによって、仕事で起こった現象を理解するために、できごとに立脚して話をしていくための共通言語ができたことはすごく大きな効果があると感じています。

Q. 組織に新たな変化や発見はありますか?

  • 私自身も含めて、一人ひとりが矛盾している存在であるということは発見でした。そして、その矛盾を開示できる場ができたことは、お互いの価値観をさらに共有して深めることに通じる、ということです。

    自分の意図通りうまくいっているときもあれば、いまだに、行き過ぎた指導的な思考になることもあります。行き過ぎた指導的な行動をしながら、アタマでは「いや、このままいったら良くない方向に進むぞ」と行動の先のループ図が見えている、この矛盾です。
    また、みんなも言ってることに多少矛盾があるんです。「こういうところは賛同するけども、でもここは譲れません」と言われることがあるけれど、でも、その譲れないと言われたものは、私も同じように譲れないと思っている、実は一緒だな、と思うこととか。

    そういう時、私自身も周りもお互いに矛盾を持っていてういう矛盾も愛おしいよねって、捉えています。その矛盾をお互いに受け容れることができてくると、それがまた矛盾する自己を自分の中に取り込んでいけるプロセスにつながるので、「ああ、幸せだな」って思います。
    こういう矛盾や葛藤を抱えながら、お互いに理解し、許し、愛でながら、探究を続けたいなというふうに思っています。

Q. 一人ひとりがもっている矛盾や葛藤が愛おしいってすごく素敵ですね

  • 言わなくても済むことは言わないでおこうっていう社風はあったと思うんですけれども、今は、ちょっとずつ、感じた違和感を、可能な範囲で言っていこうとする姿勢を感じます。違和感を無理に言う必要はないけれど、それを持ち続けて、自分で押し込めて、どこかでポイと捨てるよりも、私は明らかにしてほしいと思っている意図が伝わりはじめていて、それを実行しようとしてくれていることに、ありがとうって思っています。

    でもね、一方では、「いや、もっと胸襟を開いて、もっと本音でいこう」という気持ちもあるんだけれど、相手には相手のペースもあるだろうから、待て待てと自分と対話しながら進めています。

Q. 次の一年や中長期に向けた今後の展望を教えてください

  • まずは自らが自分のコミュニティで幸せの好循環の起点になった景色を見たい方は見られた、と言う状況をつくりだし、喜び合いたいと思います。
    そして、私たちの業界は衰退する大きな転換期にいるので、業界変革に向けた好循環の起点の一つになったと実感を、みんなで持てるような集合体になれたらめちゃくちゃ良いと思っているし、それができたら悔いはない、と思います。

Q. 今後アカデミーに入る人にエールの言葉をお願いします

  • 私はアカデミーを通じて、自分も含めて、いつでも人は自由であるということを感じ取り体感することができました。すべてにおいて、自分には問題を解く鍵をもっている。
    人は矛盾をもつ存在だけれど、その矛盾を含めて、不完全な自分とか組織っていうものを全体で捉えることができた1年だったので、ぜひこの愛と自由を楽しんでください。矛盾点を明らかにしてそれを改善するのではなくて、変容のリーダーとして、それは愛で包む、というのがアカデミーの場です。

(文責:北見幸子)

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