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25年以上のファシリテーション歴と国際賞受賞歴のあるジリアン・マーティン・ミアーズ氏が、ファシリテーションを通じて学んだことお裾分けする「ブライト・グリーン・ラーニング・ブログ」から、アクセス数の多かった記事を紹介しています。
今週1週間はずっと、企業と自然保護NGOのセクター横断グループを対象に、「異なる2つのセクター間のパートナーシップ」というテーマで、共同学習のためのワークショップを行いました。このワークショップは、興味深く、一風変わった構成になっていました。最初の2日間は自然保護団体の組織内部に入って、本部のスタッフが地域と国レベル、それぞれの部門のスタッフと協働します。3日目は関心を持つ利害関係のある多国籍企業を幅広く招きました。最終日には目玉として、自然保護団体と、より正式なパートナー関係を築いている民間企業の双方から関係者が出席し、さらに本質的な内容を話し合うための会合を設定しました。
一部のメンバーにとってはマラソンのように長く、そして参加者同士のインタラクティブ性が極めて高いゆえにマラソン以上に大変なミーティングでした。何時間か座ってプレゼンをぼんやり聴いていればよいという時間帯はありません。ペアワーク、支援ツールによる個人の内省、三人一組の相互コンサルティングをする散歩、「ラーニング・カフェ」、落書きボード、回転木馬方式のディスカッションなど、ワークショップで行われた高度にインタラクティブな演習のすべてが、グループの関係性を構築するプロセスを加速させるものでした。
そして、グループの中で相互の信頼感が育まれ、オープンなコミュニケーションが可能となり、そしてグループ内で正直でいることへの心理的安全性が得られるほどに首尾よく発展していくと、その帰結として、そのグループが準備していた演習の一部を「拒否」することにつながることがあります。私はこうした展開を何度も目の当たりにしてきました。
今回のワークショップでもこのような演習の拒否が起こりました。同僚のファシリテーターは、その演習の進行をするはずだったこともあって少しがっかりしていましたが、私はこの展開が成功を示す指標だと捉えました。
グループが一部の演習をやりたくないと言って、「演習の問いや活動がしっくりこないから、別の活動や問いに置き換えたい」と代案を提案してくることが、どうして成功を示す指標になるのでしょうか。ファシリテーターの視点からみればそら恐ろしくも聞こえますし、直感に反すると感じるかもしれません。でも、あなたがよいファシリテーターなら、こういった展開に備えておく必要があります。
あるグループが一部のセッションを「拒否」する場合、それはあなたが作り上げようとしているグループ、ネットワーク、あるいはチームが、主体的な意思決定をしている兆候とも言えるでしょう。そのグループが、自分たちが目指すべき場所を理解していて、自分たちが互いに築きつつある関係性、あるいはファシリテーターとの関係性において十分な安心感があるからこそ、その主体的な意思を(私たちが経験したようにとてもポジティブな形式で)明確に表明できるのです。グループは主体性を強め、会話を別の方向に舵取りします。その新しい方向性には、グループ全員が感じていても口に出すのをはばかるような重大な問題が絡むことがあります。こうした問題は、関係性を構築の初期段階であれば、気まずくなったり、安心して話せなかったりするものですが、その問題の解決に向けて舵をきることは長期的によい結果につながる可能性を秘めています。
こうした場合、ファシリテーターとして適切な反応は、即興劇を演じるように「いいですね!」と答え、のっかってみることです。ワークショップの進行が進んだ段階でファシリテーターへの依存が減少していくことは、常に望ましいことですし、こうした発展をアジェンダに盛り込むことだってできます。グループはワークショップの後も自分たちでプロセスを進め続け、運営していくものです。ですから、自立的な行動が起こり、しかも安全で顔の見える環境のワークショップの中でその実践ができるのは最善の展開です。
もしワークショップの参加者たちがあなたの準備した演習を拒否したなら、それは実はうまくいっている兆候かもしれないということを心に留めておいてください。
原典・文:ジリアン・マーティン・ミアーズ 「ブライト・グリーン・ラーニング」ブログ投稿 "They Threw Out My Exercise!"
http://welearnsomething.blogspot.com/2009/10/they-threw-out-my-exercise.html
翻訳:有限会社チェンジ・エージェント