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この3年間、JICAが主催する「太陽光研修」の中でシステム思考を活用したセッションを担当しています。
この研修では、世界各国でエネルギー政策を担当するオフィサーや、電力会社の社員らが、日本の太陽光発電の政策や技術、製品などについて1ヶ月ほどの期間で学び、それぞれの国での太陽光発電・再生可能エネルギーの普及を進めるために必要な能力と知識を培うことを狙いにしています。その研修の中で、システム思考を活用した知識創造プロセスと、ビジョン・戦略策定のプロセスを担当するのが私たちチェンジ・エージェントの役割です。
研修は毎年3回、大まかな戦略目標ごとにグループを分けて行います。エネルギー政策や気候変動政策の中で再生可能エネルギーを重要な柱と位置づけ、主要ミックスの一つにしていこうとするグループ、島嶼国など発電をディーゼルなどに頼らなくてはいけない状態から脱化石燃料を図ろうとするグループ、そして、世界で16億人いる、未だ電化が進んでいない地域の人々のために太陽光発電などの導入を図るグループです。集まる研修生は、すばらしい方ばかり。自国の国民のために役立とうという自負が高く、ほぼ全員がてきぱきとシステム思考の考え方やツールを修得します。
そもそも何のために、太陽光発電・再生可能エネルギー普及を図るのか目的や将来のビジョンを確認した後、自国でエネルギー政策をとりまくステークホルダーたちやその典型的なニーズ、行動、課題など、今のありのままの現実をループ図にしていきます。
そして、どこにレバレッジ・ポイントがあるのか、そこへアプローチするためのアイディアや、ステークホルダーをどのように巻き込み、戦略を実行していくかの青写真を描いていきます。ほかの国から来た参加者と、ループ図を見ながらレバレッジや政策の議論をするので、より多角的に見やすくなって、アイディアの幅も広がります。
今週、今年度の最後のセッションを終えました。おかげさまで参加者たちからの評判も高く、また、太陽光発電研修自体も来年度以降継続する方向です。また、世界の研修生たちとシステム思考を通じて、それぞれの国でどのようにエネルギー政策の転換を促進し、より持続可能な国・社会を創っていくかを考える機会を楽しみにしています。
みなさんの組織でも、ビジョン実現をどのように図るか、知識創造やイノベーションをどのように図るか、などの課題があるときには、システム思考を使った対話プロセスを使ってみてはいかがでしょうか。