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3月の最後の週から4月にかけて、インドネシアでの「ラーニング・ジャーニー」に出かけてきました。

「ラーニング・ジャーニー」とは、多様な背景、視点をもつメンバーで構成するグループが、「リアル」な課題に直面する当事者を訪ねてストーリーを聞き、その体験を個人やグループで内省するプロセスです。組織開発やリーダーシップ開発の手法とし世界的に注目されていて、しばしばU理論を使った個人、組織、超組織での変容プロセスに活用されます。

「サステナブル・フード・ラボ」というマルチステークホルダーのコンソーシアムが食料問題に関してほぼ毎年行っているほか、日本でも企業の次世代リーダーが内戦で疲弊したスリランカでの復興の現場を訪ねるツアーなどが行われたほか、島根県の海士町がラーニング・ジャーニーを受け入れています。

私たちはU理論の実践と共にこのラーニング・ジャーニーを2008年から始め、今までにジャカルタのスラム街で相互扶助・自立を図るNGO、ジャワ島西部の農村でのエネルギー自立への動き、温暖化による水問題に悩みながら対策を行う農村、バリ島西部で漁場崩壊を回避しようとするNGOと漁村などで学びを重ねてきました。

今年は、ボルネオ島の中部カリマンタン州などを訪ね、森林破壊によって追われたオランウータンや、森林を守るために活動する人たち、森林の周辺で生活を営む人たちを訪ねました。

ボルネオ島は、日本国土の約1.9倍の面積を持つ世界で3番目に大きい島で、K字上に連なる山脈の裾野に広大な平地が広がり、生物多様性がとても豊かなことで知られています。かつては国土の8割が森林でしたが、70年代くらいから急速に森林破壊が進み、今では半分ほどまでに減少してしまいました。その森に生息しているのが、「森の人」を意味するオランウータン。この100年でその数が9割以上減って、広大なボルネオ島に生息するオランウータンは4万頭ほど(他にスマトラ島の7000頭)にまで減っている絶滅危惧種です。

そのため野生のオランウータンを見るのはまれですが、今回のラーニング・ジャーニーでは、森林に返すためにリハビリ中のオランウータンやそれを支える人々と出会いました。インドネシアでのラーニング・ジャーニーでいつも思うのは、どんなに相手の立場になっているつもりでも、頭で考えているだけでは相手に寄り添うのは難しい、ということです。自分の中に先進国で暮らす立場からの偏ったものの見方が見え隠れします。しかし、現実の当事者を目の前にしながら、同行してくれるインドネシアの同僚たちとの意見交換行う事で、自らの立ち位置、より複眼的なものの見方、そして複雑な現実の先にある共有ビジョンのタネなどに気づくことができます。

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ボルネオ島での森林破壊の原因は、豊富な鉱物資源の開発、森林伐採、地元の土地利用などですが、最近特に顕著なのはパーム油を生産するためのアブラヤシのプランテーションです。ボルネオ島は世界のパーム油の大半を生産している島でもあるのです。世界的に需要が伸びる中で、日本人も一人平均4kg/年以上のパーム油を消費しています。カップ麺、チョコレート、ポテトチップス、マーガリンなどの食品、そして化粧品や洗剤などにも使われる植物油――知らず知らずのうちに森林破壊やオランウータンの棲み家を奪うことに加担しているのではないかが心配です。

植物油の消費が森林伐採や種の絶滅につながるようではいけないと、保護区や緑の回廊を設けるなどの動きも出ています。「持続可能なパーム油円卓会議(RSPO)」などが、自然保全と両立するような、認証商品の生産を急拡大していて、ユニリーバなどの企業も持続可能な原材料の調達を約束しています。こうした動きを加速していけるよう、食品メーカーや商社を巻き込んでいきたいと考えています。

最後に、この夏世界から6名、東北から6名の学生を募って、一緒に被災地や復興に励む東北を訪ねるラーニング・ジャーニーを企画しています。感性豊かな若者たちが多様な視点で見る東北の今。そこでの学びを、日本と世界で共有して、新しい視点や創造、そして東北復興の一助にできたらと考えています。

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