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Aさんはフリーランスでコンサルタントの仕事をしていました。社会のために役立ちたいとの思いから、環境の分野で仕事をしていたのですが、手ごたえは必ずしも十分ではありませんでした。もっと、本質的に環境保全につながり、そして社会の役に立ちたいと考えていたのです。
そんなある日、Aさんは新しい手法に出会います。その手法は、本質的な変化を創り出すのにとても有効なものでした。そこでAさんは、この手法を仕事に取り入れて活用し、好循環を作ろうと思いました。まず新しい手法を学ぶ「勉強時間」をとることで、「この専門分野の理解」が深まり、「問題解決能力」が向上し、「クライアントの満足度」が上がると、大きな「やりがい」を感じるようになるので、ますます新しい手法の「勉強時間」をとるようになる、という自己強化型ループです。「やりがいループ」といってよいでしょう(図1)。
しかし、残念ながらこのループはなかなか働きませんでした。なぜかというと、自分の使える「総時間」の中で「勉強時間」を増やそうとしても、その時間は収入に直接結びつかないため、「収入」が下がるわけです。「収入」が下がり、「必要な収入の目標」に届かなくなると、「収入の不足」が増えてしまいます。
「収入の不足」が増えると、「これは大変だ。仕事をしなきゃいけない」となって、「仕事の時間」を増やします。ところが「総時間」は決まっていますから、「仕事時間」を増やすとどうしても「勉強時間」が減ってきます。このループはバランス型で「生活ループ」といえるでしょう(図2)。
こうして、勉強したいなという気持ちがあって、「やりがいループ」を働かそうと思っても、収入が必要だという気持ちから「生活ループ」が働いて仕事をしてしまい、勉強を阻害する構図になっています。バランス型ループが働くために、なかなか自己強化型ループが回らない状況でした(図3)。
そこでAさんは状況を打破しようと、ループ図をしげしげと眺めました。そして、自らに問いかけました。自分にとって、究極的なやりがいや自己実現を目指すループと、生活のために仕事をするループでは、どちらが幸せをもたらすのだろうか? 自分の究極の目的は何だろうか? あるレベルの収入は幸せの必要条件かもしれないけれど、いくら収入が増えても幸せが増えるわけではない。やはり、やりがいがあってこそ初めて幸せにつながるのだ、と考えました。
そうして考えると、生活ループは本質的に重要でなくなってきます。ゼロになっては困りますが、もっと弱くてもいいだろうと考えられます。ひとたび前提を変えてみると、さまざまな発想が生まれてきました。