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すでに存在しているループを「いかに強めるか」
すでに望ましいループは存在していても、そのループがしっかりと回っていない場合は、望ましい結果を生み出すことができません。そのような構造であることがわかれば、すでに存在している望ましいループを「いかに強めるか」を考えることができます。
あるNGOでは、「もっと活動を広げ、効果を生み出していくにはどうしたらよいか?」を考えました。何年にもわたって一生懸命活動を続けているのですが、もっといろいろなことをやりたいのに、自分たちの思うようなスピードで活動が広がっていないと感じていたためです。
まず、この数年間の活動でわかってきた「すでに存在している望ましいループ」を考えてみました。「ある活動をやって結果が出ると、その分野での経験が蓄積できるよね」とある人が言いました。「うん。それで経験が増えてくると、行政や企業とのコラボレーションの仕方や一般の人たちとのコミュニケーションの取り方、プロジェクトの進め方など、いろいろな意味で、仕事をするうえでの自分たちの潜在能力が高まるね」「そう。そうすると、ますます仕事での結果が出せるようになってくる」。
この望ましい構造をループ図にしたものが図1です。
「ほかにはどうだろう? いま目に見えるほど強くなくても、可能性としてどういうつながりがあるだろうか?」とさらに考えてみました。
「仕事で結果を出せば出すほど、このNGOのことを知ってくれる人が増え、評判が高くなるよね」とある人が言うと、「評判が高くなると、やる気と能力のある人が自分も一緒にやろうと来てくれるよね」「つまり質の高い人材を採用できるようになるんだね」「そう、そうすれば、組織としての潜在能力がますます高まることになる」。
「それから」と別のメンバーが言いました。「評判が高くなれば、助成金も取りやすくなるし、企業とのプロジェクトなどもやりやすくなる。つまり、より多くの資金が使えるようになる」「資金が増えるということは、自分たちが活動するうえでの潜在能力が高まるということだね」。
こうした「いまはあまりしっかり存在していないが、可能性のある望ましいループ」をループ図にしたものが図2です。
「いまは弱いが望ましいループ」をもっとしっかり回す
このNGOでは、この点線で描いた「いまは弱いが望ましいループ」をもっとしっかりと回していくにはどうしたらよいかを考えました。そして矢印のところ(評判)に働きかけをすることにしました。つまり、自分たちの活動の成果を、きちんと分かりやすく、世の中や社会にアピールすることに力を入れるようにしたのです。それによって、点線のループのつながりを実線にし、人材と資金を強めることによって自分たちの潜在能力を大きく増強し、さらに「結果が出る→経験が増える→潜在能力が増す」望ましいループを強め、組織としても活動の規模や効果のうえでも、成長していくことができました。
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