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システム思考入門(15) 「システム思考の基本ツール② ループ図(2)」

2007年01月17日

前回、システムの構造を視覚化するためのループ図を紹介しました。システムに関する状況や関係者による認知、行動などを、因果関係のつながりでつなぎ合わせたものがループ図となります。変数を「同」または「逆」の因果関係でつなげて、ループ図を描いていくと、システムの構造が浮かび上がってくることを、前回説明しました。

このループ図で表されたシステムの構造の中に、要素のつながりが連鎖して元の要素に戻ってくるフィードバック・ループがあるとき、そのフィードバック・ループがある種のパターンを作り出します。変化をどんどんと強めていく力が働くのは「自己強化型ループ」と呼びます。逆に変化を安定に向けて均衡させる力が働くのが「バランス型ループ」です。

多くのシステムには、どちらか、ないし両方の種類のフィードバック・ループが混在しています。時系列変化パターングラフを作った際に見られるさまざまな変化のパターンは、複数のフィードバック・ループの組み合わせによって生じているのです。

したがって、時系列変化パターングラフとループ図は、通常照らし合わせながら使用します。システム思考での重要な習慣は、社会システムの中で変化が見られるとき、「この変化はどのようなフィードバック・ループによって生じているのだろうか?」と問いかけることです。時系列変化パターングラフに示された「今まで」・「このまま」のパターンを作り出しているシステムの構造をループ図で描きだす事ができれば、それは「望ましい」パターンを創り出すための変化の第一歩になります。(詳しくは「レファレンス・モード」としてご紹介しました。)

さて、どうすればループ図をうまく描けるようになるのでしょうか? ループ図を描くことは、「絵を描く」ようなものです。つまり、鉛筆や筆の使い方は練習をすることで覚えることができます。しかし、ひとつひとつの因果関係やそのつながり、そしてその全体像であるシステムの構造は、絵を描くときに被写体を観察するように、実際にシステムがどのようになっているかを「見る」以外に方法がありません。

状況がどうなっているか、自分はその状況から何を認知し、何を感じて、どのような行動をとっているか、自分自身で観察したり、振り返ったりして、じっくりと見ることで、ループ図を描き上げていきます。自分のループ図を描くのはまさに、「自分と向き合う」プロセスでもあります。

職場やコミュニティなど多くの人が関与するシステムについては、よくそのシステムを知っている人に聞いてみないとわかりません。自分でよく知っていると思う場合でも、ほかの人も同じようにシステムを見ているとは限りません。そのシステムが動いている現場に行って、観察したり、話を聞いたり、あるいは現場の関係者たちと一緒になってループ図を描いていくことが重要です。

さまざまな関係者にそれぞれの視点から見た風景を組み合わせて、はじめてシステムの全体像がわかるものです。いわば、モザイクのようにさまざまな人のシステムを描き出して、つなげていくことになります。

時系列変化パターングラフとループ図はとてもシンプルなので、初めてみる人にでも比較的容易に理解してもらえます。ちょっとコツをつかめば、これらのツールを使って「このままだとこうなると思っています」「私はこういう因果関係だと思う」とか、「実は、こんなふうに考えて行動していたのです」など、システムに関わるさまざまな会話を引き出すことができます。こうして、システムの複雑さを全員で理解していくことができるのです。

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