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ピーター・センゲの「学習する組織」:欧米企業の戦略的重要課題

2006年11月24日

メルマガ11月8日号でピーター・センゲ氏の活動を紹介しました。センゲ氏は、「学習する組織」こそがこれからの激化する競争を生き残れるとし、ソサエティ・フォー・オーガニゼイショナル・ラーニング(SOL)というコンソーシアムを結成しており、BP、HPなど世界の名だたる企業がこのコンソーシアムに名を連ねています。

ピーター・センゲ氏のファシリテーションによって、コンソーシアムに参加する欧米の大手企業の経営者たちが、これからの企業が取り組むべき戦略的課題について話し合いました。その内容が『Presence』に紹介されています。

(引用ここから)
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『マーブルヘッド・レター』(2001年10月)

以下の本来的な課題が、企業、とりわけグローバルに活動する企業の未来を左右する。

社会の格差:ますます相互依存性を高めるグローバル経済に、参加するものと参加しないものとの間でのギャップが広がっている
「15%の富めるものが、85%の物質的な冨をもつ状況をいつまで続けられるのか?」

成長の再定義:増え続ける大量の物質消費と廃棄に根ざした経済成長は、有限の世界の中で存続し得ない
「同じ箱の中にいつまでガラクタを積み上げつづけることができるのか?」

多様性と包含性:文化的多様性を増す組織の中で、包含することをコア・コンピテンシーとして開発する
「『私たち』とは誰を含めるのか」

才能ある人材の獲得と潜在能力の開花:これからの「フリー・エージェント」社会、「ボランティア」社会における企業の外部の人材へのコミットメントを広げる
「一体、何にコミットメントすればいいのか?」

企業の役割:企業、とりわけグローバル企業の影響力が大きくなる中、その影響力にふさわしいレベルまで企業の社会的責任を広げる
「社会は企業にどれだけのアカウンタビリティを求めるのか」

自己抑制システム:さまざまな社会システムを調整し、一貫性を確保するチャレンジ
「ヘッドライトが曇り、未来の不確実性が増しているにもかかわらず、ますますスピードを上げるような行為をいかにしてやめられるか」

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引用ここまで(ピーター・センゲ、他著『Presence』より、チェンジ・エージェント訳出)

どれも深刻で、経済、社会、環境システムに深く根ざした本質的な課題です。6月に私たちが参加した国際会議は、企業のこれらの社会的責任の課題に関する進捗やこれからの課題について話し合うものでした。どれひとつをとっても、簡単に解決できる課題ではありません。その課題に取り組み、解決していくために、欧米の企業はシステム思考や学習する組織のコンセプトを取り入れ始めていることを実感しました。

これらの課題は、実は日本の企業にとっても、そのままあてはまります。私たちは仕事を通じて、日本の大企業の経営者たちと対話する機会がありますが、残念ながら上記のような、社会と企業の本質的な課題に取り組んでいる企業はまだまだ少数派にすぎません。日本で「企業の社会的責任(CSR)」という言葉は、ブームに乗って形骸化しようとしている現状を憂慮しています。

企業にとって、目の前の会社の短期的な利益ではなく、より広く、長期的で、複眼的な視野・視点で社会とその中での企業の活動を見つめなおし、社会のシステム的な課題に取り組むことが重要です。そして、複雑に変化するビジネス環境において、これからの企業の競争力と生き残りを左右するのは、システム思考をふまえた学習能力、適応能力にあるといって過言ではないでしょう。

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