イベント&セミナー
本コースはおかげさまをもちまして、募集を終了いたしました。
このセミナーの英語での案内ページはこちらです。
The information page for this seminar in English is at the following:
https://www.change-agent.jp/events/001503.html
近代的なシステム思考は、電気工学や熱力学などの工学的な研究と生物学や生態系学などの生命的な研究が統合されて発展しました。その応用分野は、複雑なパーツとプロセスで構成される製品、インフラ設備などの設計開発から、人の心や人間関係、組織や社会、経済の営みまで幅広いものとなっています。
ものづくりであれ、生命や集団の営みであれ、フィードバック、遅れ、ストック&フロー、非線形性など、要素だけでなく要素間のつながりとつながりから生じるシステム特性と時間展開に注目する点で共通の原則が多数存在します。しかし、私たちはともすると、人や集団や自然を、工学サイドの機械論的な世界観に偏りがちです。「複雑系」とも言われるシステムを理解するために、私たちは物事をもっと生命論的な世界観から捉える必要があるでしょう。私たちの社会は、ある意味ぐちゃぐちゃで骨の折れるものかもしれませんが、理解を深めれば比較的シンプルなルールで形づくられ、美しく神秘できてすらあり、環境変化に適応し、進化していけるものでもありえます。
「社会・生態システム(Socio-Ecological System)」とは、人間社会と生態系が相互に関連する複雑なシステムを指します。人間社会と生態系の相互作用は、例えば日本・アジアにおける稲作のように数千年も恩恵を提供してきたシステムもあれば、北海道のニシン漁のように乱獲で激減して恩恵を持続できていないシステムもあり、そのシステム的な性質から生じるパフォーマンスとその持続可能性はさまざまです。
人間社会や生態系のような、生命体によって構成される複雑なシステムは、その時々の社会通念からは予想できないような変化、驚きをもたらし、それを予測あるいは管理しようとしても大きな不確実性をもって人間社会を翻弄することがあります。その一方で、そうしたチャレンジや環境変化に対して、崩壊していくコミュニティもあれば、環境変化に適応していくコミュニティもあります。
こうした挙動パターンの違いは、どのようなメカニズム(構造)によって起こるのでしょうか? 望ましくない軌道にあるときに、どのように望ましい軌道に向かうようなシステムの変容ができるのか、そして、そうした変容を起こすために、私たちはどのように集い、課題に向き合っていけばよいのでしょうか?
これらの問いについて考え、答えを見いだしていく基盤として、本ウェビナーシリーズでは、社会・生態システムにおける変化、特に突然発生し、驚きと予測不可能なインパクトを持つ変化について、「レジリエンス」、「パナーキー」、「トランスフォーメーション」などのシステム思考の概念とツールを紹介します。
ウェビナー講師は、世界有数の研究所に在籍し社会・生態システムを研究してきた湿地生態系学者のヤン・センジミール博士を招聘します。私たちは、これまでもヤンからシステムのレジリエンスや現実のシステムにおけるアクション・リサーチの成果などを教えてもらいました。ヤンは禅の実践者でもあり、東洋思想にも通ずるシステム思考家です。
なお、本ウェビナーは、ヤン・センジミール博士の好意により無料で提供します。またセミナーの時間や費用を推させるために、講義に英日の通訳を入れない英語のままでの形式での提供になります。チェンジ・エージェント社の願いとして、世界のシステム思考家たちから学ぶ機会を増やし、また日本の貢献を世界に広げるためにも、日本の学習者たちが共通言語として英語を使いこなすことが重要になると感じています。なお、理解や進行の支援のために、資料は日本語を合わせたバイリンガルで提供し、また、日本語で質問される方のために日英の逐次通訳をご用意します。
詳細及び申し込み方法は下記の通りです。
英語で、生きているシステムの智慧を学ぶこの機会、是非ご参集ください。
日時・場所
第1回 2022年9月17日(土) 19:00 - 20:15
第2回 2022年10月1日(土) 19:00 - 20:15
いずれもZoom会場にて
プログラム概要
第1回「グローバルな変化の中でのレジリエンスと不確実性」
はじめに - 変化が突然で予測不可能な場合、システムにおける不確実性は増加します。この課題は、70年前の生態学的大災害(例:カナダの森林、農業)で力強く明確に現れました。さらにこの課題は、気候変動によって劇的に増加し、将来的にはより大きな増加(例:森林火災、洪水など)を目撃することになるかもしれません。
このセッションでは、「レジリエンス(Resilience)」という概念が、非線形で驚くべき変化をどのように説明するかを、自然の生態系ダイナミクスの例を使って紹介します。また、「パナーキー(Panarchy)」という概念も紹介し、システムがどのようにレベルの階層構造になっているかを説明します。各階層レベルの中で、また時には階層レベル間で、影響に抵抗したり吸収したり強調したりするようなプロセスが働いています。
- 水生生態系のレジリエンス
- 事例:浅い湖
- 陸域生態系のレジリエンス
- 事例:山林の火災
- レジリエンス理論
- 複雑適応系(CAS)の構造
第2回「トランスフォーメーションに向けた不確実性の管理」
このセッションでは、これらの概念を発展させ、社会・生態システム(SES)における変化の原因を明らかにし、特にマネジメントの観点からシステムの「トランスフォーメーション(Transformation)」にどのように適用されるかに焦点を当てます。
- 複雑適応生態系のレジリエンスとパナーキー
- 事例:浅い湖
- 事例:河川流域
- 社会生態系のレジリエンスを管理するための戦略
各回とも導入の後、約45分の講演、20分の質疑応答・討論を予定しています。
ウェビナー講演は英語で行われ通訳・字幕等はありませんが、資料を日本語で配布します。
但し、質疑応答での質問には、日英の逐次通訳が入ります。
講師紹介
ヤン・センジミール博士
天然資源応用生命科学大学水圏生態系管理研究所(BOKU)研究員
国際応用システム分析研究所(IIASA) 研究員
米国フロリダ大学ゲインズビル校にて、H.T. Odum、C.S. Hollingのもと、環境工学プログラムの一環としてシステム生態学を学ぶ。
その間、湿地生態学者として、天然および人工の湿地の設計と廃棄物処理システムへの統合に携わる。センジミール博士は、湖沼、河川、森林の生態系の動態に関するフィールド研究に加え、学術機関、NGO、政府との共同研究で、河川流域、主要流域、山脈などの比較的広い地域で発生する、生態学、経済、社会政治的要因が複雑に絡み合った問題に応用する研究を行っている。主な研究分野は、生態学、社会、経済の相互作用が、異なるスケールでの変化への適応や緩和の能力にどのように影響するか、また、それが変化に対する社会生態系の頑健性や回復力にどのように影響するかに焦点を当てている。博士は、適応的管理プロセスのような意思決定の枠組みにおいて、社会の異なる分野や部門からの視点を統合するために、概念的かつ形式的なモデリングを社会的シミュレーション演習(ロールプレイングゲーム)として使用している。
主催・共催
主催: 有限会社チェンジ・エージェント
共催: 有限会社イーズ
参加費
無料
(ウェビナーの録画をセミナーやウェブで再配信をする予定のため、その映像に参加しているご様子が映る場合があることにご同意ください。また、質疑応答以外の通訳がありませんことご了承ください。)
お申込み
以下のフォームより、必要事項をご入力の上、お申込みください。
※お申し込み後、一週間たちましても返信が届かない場合は、送受信のトラブルの可能性がありますので、お手数ですがご一報いただけますようお願い申し上げます。
2日間通しでの申し込みですが、一方の日付で参加できない方には、後日ビデオをご案内します。
お問い合わせ
(有)チェンジ・エージェント 兒玉・小田
seminar@change-agent.jp /03-5846-9660
【お願い】1週間たちましてもお返事が届かない場合は、メール送受信のトラブルの可能性がございますので、ご一報いたけますようお願い申し上げます。
公開:2022年8月23日