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デニス・メドウズ氏講演「成長の限界―気候変動とエネルギー・チャレンジ」(要約版)

2007年12月05日

  => (スライドのPDF資料はこちらから)

30年前にMITで行っていた研究についてお話をするために日本にまいりました。その当時、私は、コンピュータで示した将来の可能性についての、いくつかのシナリオを示しました。

そのメッセージは、人口や工業が、20世紀と同じような形で21世紀も、成長をしつづけたなら、将来的には崩壊につながる、というものでした。その圧力やストレス、歪みが出始めるのは、シナリオによって2010年だったり2040年だったりしますが、その間に発生します。

当時、「ここままでは限界を行きすぎて崩壊する可能性がある」というメッセージの基盤となるのは、私たちのコンピュータ・モデルしかありませんでした。ですから、なかなかわかってもらえなかった。でも今日、テレビを見ても新聞を読んでも、限界を行きすぎてしまったことによる歪みに関する記事や情報があります。ですから、今では伝えたいメッセージを伝えやすくなったとも言えます。

(ちなみに、「成長の限界」に対して、「2000年には石油が枯渇すると予言していたのに、実際には枯渇していないではないか。いかさまだ」という批判がありますが、「成長の限界」のシミュレーション結果では、2000年の段階では資源は十分にあることがわかっており、石油の枯渇時期などを予言したことはありません! そもそも予言のための研究ではありませんでした)

では、実際にどのようになっているのか? 世界人口を見ても、工業生産高を見ても、同じように、ずっと成長を続けてきました。ですから現在、世界は長期的な限界を超えてしまっています。

エコロジカル・フットプリント(その人間活動を支えるためには地球がいくつ必要か?)を見ると、「成長の限界」を出した1972年には、0.85個ですんだのですが、現在では1.35、つまり、35%も限界を超えてしまっています。

地球の限界を超えて成長を続けようとしても、それは長続きしません。成長を抑えようという圧力やストレスが強まります。現在、そのように働いている2つの力として、気候変動と化石燃料の枯渇があります。

いま、少なくとも日本では、皆さんが気候変動についてはご存じですが、もうひとつの限界として影響を与える石油の枯渇という問題には、ほとんど関心が払われていないのではないでしょうか。

公式な発表などでは、石油生産量はこの先数十年間、トータルで50%もいまの水準よりも増えることになっています。しかし、実際にはおそらく、今の水準より50%下がることになるでしょう。

その落ち込む分を、いかに代替エネルギーを使おうと、あるいは効率性を向上させようと、何をやっても完全に埋めるには至りません。ですから、「使えるエネルギーの量が今までよりも少なくなる」時期が必ず来ます。私たちそれを受け入れざるをえなくなります。

石油価格は、この10年間に6倍に高騰しました。近い将来、さらに2倍ないしは3倍に上昇すると考えられます。すぐに価格が下がってくる状況ではありません。

そういう意味では、「次の石油ショックが来る!」ということです。しかも、今度来る石油危機は、前回のように政治的な理由で起こるものではなく、地球の物理的な制約によって起こるものになります。政治的な理由であれば、政治家は考え方を変えることもありますが、しかし自然界はそのようにはいきません。

その結果、日本ではどういう状況が考えられるのでしょうか。日本は、エネルギーの83%を輸入の化石燃料に頼っていますから、それだけコストが上がります。金銭的なコストだけではなく、政治的なコストも含まれます。また、このように石油価格が高騰ないし高止まりすると、日本の輸出先の国、たとえばアメリカ経済も縮小することになりますから、ひいては日本の製造業の繁栄の可能性も小さくなっていくでしょう。

これまでの100年間に日本がたどってきた変化を思い起こしてみてください。いまから2030年までに起こるであろう変化、あるいは起こるべき変化は、この100年の変化よりも大きなものとなります。それだけ大きな変化がこれから起こるということです。その変化を、自分たちで率先して起こすのか? あるいは変化を強いられることになるのか? それだけの違いです。

どの国もこの趨勢の影響を受けます。しかし、日本がその影響を小さなものにすることは可能です。ただしそのためには、早く行動を起こす必要があります。つまり、「いま」行動を起こさなくてはなりません。

●演者プロフィール
デニス・メドウズ氏 (インタラクティブ・ラーニング研究所所長)

デニス・メドウズ氏は、長期的な視点からものごとの全体像と根源を見るシステム思考の大家であり、人口、経済と地球環境に関するローマクラブへのレポートとしてまとめられた『成長の限界』は世界中で注目を集めた。MITで経営学博士号を取得後、MIT、ダートマス大学、ニューハンプシャー大学などで経営学、工学、社会科学などを教え、プログラムディレクター、学部長などを歴任した。システム思考、未来学、体験学習など10の著書を持つ。世界の企業のボードメンバー、政府・業界・NPOなどへのコンサルティングの実績多数。地球温暖化問題、ピークオイル問題における世界の第一人者でもある。

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