学習する組織

Learning Organization

学習する組織/ケース・スタディ

学習する組織は、ピーター・センゲが提唱して以来、数多くの企業、政府組織、非営利組織で実施され、組織・セクター横断のネットワーク組織でも展開されています。その中でも著名な事例を3つ紹介します。

1.フォード自動車 リンカーン・コンチネンタルの開発部門

開発の遅れが常態化していた開発会社の経営チームは、競合の進出により期日通りの上市が会社の命運を分ける事態に直面しました。MITと協力して3日間の「学習する組織」の研修実施後、ファシリテーターの助けを借りながら2週間に1度のチーム学習セッションを続けました。

当初、経営チームのマネージャー同士で激しくぶつかる場面などもありましたが、本音で腹を割って話す風土が徐々に培われます。またシステム思考のツールであるループ図を駆使して、開発の遅れの原因について探求しました。レバレッジ・ポイントを見出した経営チームは、学習成果を方針や作業手順の変更に反映し、さまざまな現場の創造的な取り組みを奨励したのでした。

その結果、開発は順調に進み、予定よりも早く完成して、デザインや品質面でも高い成果を残しました。開発経費の節減額も80億円に及んでいます。

詳しく知りたい方はこちらをお読みください。
学習する組織入門(8) 「学習する組織の実践事例(1)」

2.ユナイテッド・テクノロジー社

部品メーカーにとって、デザインや製造を見立てていかに早く正確に価格見積もりを出すかは重要な受注の要因です。ユナイテッド・テクノロジー社(UTC)は50日間かかっていたところ、わずか17日間で見積もりを行う競合が現れました。顧客を失いかねない危機に、外部コンサルタントに依頼をしてビジネス・プロセス・リエンジニアリングに取り組んだ同社ですが、結果はかえって見積期間が延びてしまうというさんざんな結果に終わりました。

あらためて、自分たちの能力を最大限発揮するしかないと考えたUTCは学習する組織のファシリテーターに依頼します。ファシリテーターは、チーム学習を通じて、見積もり期間がなぜ長いのかについて、システム思考の「視点レベルの氷山モデル」を活用した「ビジョン展開マトリックス」を駆使して、構造的な原因と自分たちのメンタルモデルを省察します。

チームは「10日間達成か、倒産か」という決意でチームが一丸となって見積期間の削減に臨み、構造変革とそれを効果的にするメンタルモデルの変容を図りつつ、チーム学習から革新的な方法を見出していきます。

結果、従来50日かかっていた見積もりがわずか5日間に縮めることができ、見積もりの精度も向上して危機に瀕していたビジネスを盛り返すことができました。

詳しく知りたい方はこちらをお読みください。
学習する組織入門(9)「学習する組織の実践事例(2)」 

3.サステナブル・フードラボ

現在、人口増加のペースに食糧生産のペースが追いつかず、一人当たりの食糧は減少し続け、また社会の不平等から世界で8.5億人の人が饑餓に苦しみ、毎年600万人もの子ども達が命を失っています。加えて、多くの農地で化学肥料・農薬の過度の利用などから砂漠化や土地の地力減退が進み、水の供給がままならないリスクを抱えて、食糧生産の持続可能性に黄信号が点る状況です。

深刻な食糧問題がこのまま続くとしたら、食品メーカー、食品流通、小売などの業界のビジネスはいずれ成り立たなくなるでしょう。しかるに、食糧問題は1社の手には余る、あまりにも大きすぎる問題です。

どうにかできないかと考えた企業、政府、非営利組織と生産者の有志が、世界の農業と関連ビジネスを持続可能なものにするための壮大な実験プロジェクト、「サステナブル・フード・ラボ」を起ち上げます。

U理論というダイアログの最新理論をもとに、ファシリテーターがセクター横断チームをラーニング・ジャーニー(学びの旅)に誘います。システム思考を駆使して徹底的に現実を見つめ、さらにダイアログから自分たちの思い込みを排して自分たちの真に求めるものは何か、一人ひとりの使命と天職を見出していきます。

共有ビジョンを携えたチームは、次々と革新的なアイディアを生み、実行に移し、今までの食品業界と農業慣行を変えるさまざまな取り組みを始めています。

詳しく知りたい方はこちらをお読みください。
学習する組織入門(10)「学習する組織の実践事例(3)」

変化の激しい時代に必須のコンピテンシー

グローバル経済において、企業の平均寿命は意外と短いもので、世界ランキングに入るような大企業であっても、その多くは環境変化に脆弱です。その中にあって、学習する組織はほかの組織には見られない優れた特性を発揮して、長期に持続的な発展を遂げてきました。

その秘訣は、3つの優れた組織特性にあるといえるでしょう。学習する組織は、外的環境の変化をいち早く察知し、自らを新しい環境に適応させる「適応性」に優れています。そして、強い衝撃もしなやかに受け止め、回復力に優れる「しなやかな強さ」を有します。そして、自ら学び、創造し、自らをデザインし、常に進化し続ける「自己組織化」ができるのです。

変化が激しく、知識やノウハウが簡単に真似られる時代にあって、組織の学習スピードこそが、真に持続的な競争優位をつくると言われています。学習する組織は、そのような時代に、社会のニーズに応え、価値を創造し続けるための重要なモデルを提示します。

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